猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

トーザ・カロット岬の毛糸屋さん-6

今日は君のため息を

拾いにきたよ

そろそろ泣きたい季節でしょ


月が隠れるのも雨の日の約束も

今年はどうも早すぎる


だから君のため息を

拾いにきたよ

なんだか下向く季節でしょ


星の色も毛糸の色も

濃くなりすぎる

ため息つくぐらいで

染まるのが

ちょうどいいんだがね


毛糸屋さんはまあるい手で

器用にリュックのひもをとき


"薄曇りの朝に傘を持たない勇気"


という名のころころした玉を


おまけです

まいどありがとうございます


ふたつ握らせてくれました


花火みたいに秘密めいた

何色とも言いがたい

夏の夢そのものを編む

毛糸です


夏風邪で寝込んでいたから

どこまでほんとでどこから絵空か

わからないけど


はっきり目が覚めて

きょろきょろしたら

枕元に毛糸玉がふたつ

置いてありました


トーザ・カロットの岬には

今日もびゅうびゅうと風が吹いていて

ため息も夢も溶かし込んだ毛糸を売る

不思議なお店は大繁盛しているのです