猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

拠りどころ

とりあえず 言葉がそこにあること おなかが痛くないこと わたしもあなたも 身体の中が鎮まって 明日を迎えられること ランキング参加中詩

あたしの中の群衆

あぶくですら宿命だとするなら いっそ生まれる前の そのまたずっと前の はるか昨日へ 思いすら存在しなかったあの時にまで 息をつきたい だけどあたしの中の群衆が そうさせない 微笑みたい だけどあたしの中の群衆が そうさせない 許したい だけどお前なん…

風景に会いたいから 旅するのではなく あなたに会いたいわけじゃなく ただ 風を抱きしめたくなる それだから詩人さんは 人生を旅するのです ランキング参加中詩

3月11日。 あの年は、金曜日だった。

03月11日。 あの年は、金曜日だった。 立ち寄った店で賑やかなラジオ番組が流れていて、店主と明るめの会話を交わしたのを覚えている。 帰宅してラジオをつける。 少し遅い昼食。BGMは、先ほどの店で流れていた同じ番組だ。 午後3時近く、速報が入り緊迫し…

幸せと不幸せはきっと同義語で

生きている間、 時間を止めることも進めることも叶わない我ら 過去に向かいやすく思い悩みやすくなるのは、 この全くもって落ち着かない天候のせいだろう 悩みの果てに少し未来へ 望みはそれだけだ 幸せと不幸せはきっと同義語で 喜びと悲しみもサイコロの目…

とりあえずでいいから

とりあえず ご飯を炊いておく(おむすび作ればなおよし、だけど無理せず) とりあえず 水まわりをなんとなくでいいから 片付けておく(拭きあげればなおよし) とりあえず 少しのお金と身分証明と飴玉なんぞを バッグに入れておく とりあえず 空を見上げてう…

バカだねと受け止めて

まだ 大晦日にいるわたしを どうにかこうにか今日へ呼び戻す 何も起こらなかったあの日に 魂がとどまってしまいそうで 空っぽになった器を満たすべく 飲み食いし そのたびに罪悪感を覚えて また 大きすぎるため息になる 「大丈夫?」がこんなに無力で 「平気…

いつかへの祈り

乾いた空に音楽を 乾いた言葉にユーモアを 乾いた心にあなたが いつか気づきますように ランキング参加中詩

たとえ偽善と言われても

大丈夫だろうか無事だろうか できることはなんだろうか 「何もできませんが」 より 「何かできることを」 でありたい 独りよがりで走りすぎないことでも ありたい 否定の言霊を飛ばさずにいられたら どんなにいいだろうと自分を詰る いっときの思いではなく …

野の花を見よ

去年、念願のトラディスカンチアが手に入った。 蔓性植物で育てやすく、春に可愛らしい花をつけるらしい。 葉がところどころラベンダー色に染まっているところが、なんとも和やかな空気感を作り出してくれる。 植物は偉大だ。そんなことを思う。 植物はたく…

侵食されたい

新しいことに侵食されたい そう願う日々が今年もやってくる 侵食され続けて いずれは黒々した感情が消えるなら あの人への妬みも この人への理不尽さも まあそんなには不条理ではないだろうと 上書き なんて単語ほどスッキリした感覚でなくていい いつもいつ…

狡く迷う

遥かの島で人が燃えて わたしは泣くしかできなかった 遥かの国で大地が崩れ わたしは祈るしかできなかった 誰かの隣であなたが睨む わたしは黙るしかなかった あなたの隣で誰かが消える わたしは見ているしかできなかった ランキング参加中詩

人生~空想版「フシギナカラダ」より

喪失と選択の連鎖をもって 紡がれていく時間のこと ランキング参加中詩

終わりを満たすもの

すべてが疎ましく すべてが悲しく すべてが妬ましく すべてを手放して すべてに涙し すべてを悦び すべてをうけいれ すべてに感謝する うけとるそばからこぼれても いいじゃないか 他の誰かがうけとって また巡り巡るのだから 愛は回る 愛はめぐる 目にもと…

そうして星に食べられながら あるいは星を喰い散らかして

風にのって届くのは 夏忘れの噂と秋始まりの調べ 奏でるかみさまたちは それぞれをつまみ食いしながら ひとあみひとあみ 季節を縫いあげる いつかは秋が濃くなって いつかは夏が消え去って 溶けた体のことなども記憶の向こうに追いやって そうして星に食べら…

かみさまの置き土産

同じ1日も同じ空も ありえないのに まるで今日はいつか出会った時間の 置き土産のようだ ほら ラジオでは聞き覚えのある話と 昔々の綺麗な曲 戦いが終わったというニュースが 流れているよ 夢を開く鍵は 遠い昨日に置きっぱなして 夢を閉じる蓋は いつだっ…

星が泣くから

星が泣くから心が騒ぐ 風が踊って憎悪が過ぎる 雨のざわめき悲しみ深め ちぎった雲を今日も固める ランキング参加中詩

マスクの要る場所

私用で定期的に訪ねる場所が、現在もマスク必須である。 暑い時季の装着はなかなか体力を削がれるものなのだが、幸い猛暑日はずいぶん少なくなった。 マスクの要る場所で、いつものように小さな荷物を差し入れ、 マスクの要る場所で、いつものようにその人と…

かぼちゃ

かぼちゃ餡になって ふわふわ包まれる 秋はそんなふうに始まるのだ 色とりどりの 音とりどりの すくうそばからこぼれ落ちて 最高気温ってなんだっけ にわか雨ってあんなに激しかったっけ 無責任に呟けば 人らはようやくほっとひと息つけるのか かぼちゃ餡に…

しらない

何も知らないふりをした 何も待たないふりをした 何も見てないふりをした 何も聞かないふりをした 全てを知っていたけれど 全てを待っていたけれど 全てをじっと見てたけど 全てをじっくり聞いたけど わたしは知らないふりをした わたしは待たないふりをした…

残暑

今日辺りから、残暑見舞いのご挨拶ということになる。 暑さは続いているが、こよみの上では秋と呼ぶ。 我慢せずエアコンを適切に使いなさい。 水分は喉が乾く前に摂りなさい。 外出は極力控えなさい。 キケンナアツサデス、イノチニカカワリマス! 日々、テ…

SNSでいわゆる「片思いフォロー」させて頂いている人が、亡くなった。 そのうちの一人には、生前2〜3回ほどお会いする機会があった。とっておきの裏話が茶目っ気たっぷりに明かされたトークショー、涙が止まらなかった作品の舞台挨拶、優しい笑顔と声。 サ…

うまく横に置いておけるようになったから

週に一度 逢いに行く人がいる 約束はしない 期待せず悲しみも喜びもせず 怒り…は うまく横に置いておけるようになったから ただ 淡々と会話し ただ そうね、そうだねと 聴き流し ただ またね、と告げて来た道を帰る いつか終わると分かっていても いつかを忘…

壮大な手紙

あの映画、鳥の映画とも呼ばれる その映画、気になって気になって この映画、やっと観てきた これは(監督はご存命である) まるで次世代への遺言にも似た 途方もなく壮大な手紙なのだと 思い至る 哀しみと愛情と苛立ちと 思春期から青春へさしかかる頃の 懐…

水の中

知らない音が脳を満たし 重たい報せが体を覆う うれしい知らせがかき消えて かなしみの行方すら煩雑だ それでも生きるのは それでも息が続くのは それでも涙を知ることは それより術(すべ)を持たないままで 知らない音が脳を満たし 重たい報せが体を覆う う…

生かされている

毎月、現金支払いの用事がある。 引き落としでもクレカでもない昔ながらのやりとりなのだが、できるだけお釣りの出ないように準備することにしている。 あるとき、ちょうど支払いの頃に荒天となった。 「今日は雨がひどいですから、どうぞ後日に」と言われて…

旅支度

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恋慕

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