猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

コーヒーと毛糸と花

冬物の引き出しをひっかき回し 慌ててセーターに着替える 季節が丁寧に丁寧に足踏みを繰り返すから 猫街も幾分白っぽい風が吹く それでも約束は約束だ 無理しなくてもいいんですよ、 あなたは私たちと違って 人みたいなものだから 珍しく電話をくれた猫そっ…

充電

スポドリの代わりにすればいいさ ねじ巻きを忘れないように、との但し書きは 確かに欠かせないのだがね じゃあ エンプティになったなら その時はその時 眠って眠って眠り倒して また次の時に悩めばいい なんだってできるから きっと ランキング参加中詩

猫街は曇り空

猫街は曇り空 冷たく激しい風の街 指先も頬も心までも切り裂かれそうだ いまだ解けない絆の いまだ溶けない心の いまだハリツイタ笑顔の 意味を深く嘆く 猫街は曇り空 冷たく激しい風の街 指先も頬も胸の中までも切り裂かれそうだ ランキング参加中詩

詩人さん、剪定する

卓上で小さな森を作り始めたトラデスカンチア。 かわいい(嬉)。 このままにしておいても、グリーンで癒される幸せを日々受けとることができる。 ただし、グリーンだけになってしまったり、ラベンダー色が楽しめなくなると知った。そこで、今回の剪定である…

映画を1本

猫街のちょうどいい場所に、猫街シネマがある。 詩人さんは映画好き。と言っても、内容によってはなんらかの(使いこなせない)魔法が発動して手持ちの何かをすっ飛ばす危険性があるから、アクション多めの作品は外では観ない。 ハンカチが飛ぶとかポップコ…

どんっ! てっきり、下手な魔法が自分から漏れ出たのかと思った。 昨夜書き物をしていたところ、キッチンのほうで大きめの…寝た子が起きるくらいの物音が響いた。いや、響いたと感じた。 なぜなら、耳で聞いたのではなかったから。 これはひょっとして、もし…

春の気配

冬の気配はドアから引っぺがしてもそこまで悪さをしないが、春の気配となると話は違ってくる。 宇宙全体がポカポカ傾向のようで、ここ猫街も御多分に洩れず。雪は深いが寒さはそれほどでもない。 午後の予定を早めに切り上げ帰宅した。鍵を開けようとして気…

雲色した猫のお皿に蜜柑をひとつ

ぱち、ぱち、しゅわ。 悪戯ずきの悪友だろうか。 爽やかな音が相変わらず外からしている。 着替えてそっとドアを開け、びっくりしたはずみでほんの少し魔法が発動する。 「詩人さん寒いわよ〜」とぼやく声に、すみませんとあやまりつつ、ぱち、しゅわ、の正…

みかんが食べたい詩人さん

高熱で寝込んだ。旅から帰って二日目のことだ。 体内時計が壊れる。 いくつかのキャンセルを電話連絡した記憶はあるのだが、寝込んだ三日のうち丸一日分の時間がぽっかり抜け落ちる。 テレビは見ない。 スマホも見ない。 PCも開かない。 ラジオも聴かない。 …

蜜柑に惹かれる詩人さん

猫街の夜明けが、ずいぶん遅くなってきた。 もう冬そのものなので、遅く帰ってきて鍵穴に(正確には冬の欠片に)話しかけていても見咎められることはない。 ありがたい これ以上、「寒くなった!」と言われても、何も対処できないから困る。 そういえば、駅…

詩人さんと音楽とラジオ

猫街ラジオから、律儀に「空落ち予報」が流れる ほんの欠片ほどしか降りはしないし 星が終わってしまうわけでもないから、 ただ少しだけ いつもより頑丈な傘で出かけるか ただ少しだけ 買い物の予定を早めるか それだけのことだ 今夜はシチューが残っている…

詩人さんとポケットと友人

「魔法がちょびっと使えるんだから、ポケットなんかいらんでしょ」 口の悪い友人が、そんなことを言う。 いやいや、コントロールできぬのだよと返しながらポケットからのど飴を取り出し、手渡す。 去年のじゃないから安心しな、と付け加えて。 ポケットにビ…

詩人さんと青色の家

猫街の海が見える小さな土地に、 これまた小さな…そう、なにかのかみさまを祀った 小さな青色の家がある やたらと珈琲豆に詳しいあの店の店主によれば、 「わたしたち猫モドキを、昔の人らが勘違いしたのでしょう」 ということらしい 雪のない、よく晴れた昼…

詩人さんと乾燥野菜

食器棚の上に手が届かない。 拭き掃除をしたいのだが、踏み台を倉庫から持ってくるのも億劫だ。 そこで、小さなモップをそーっと浮かせて、ゆっくり埃をかき集めた。 かさり。 不穏な音とともに、何かが落ちてきた。 びっくりしたはずみで魔法が解け、モップ…

大移動する詩人さん

花を咲かせるのは、多分あまり向いてないらしい。 それはそうだ。冬のかけらに触れても(冷たさを感じはするが)平然としているくらいだ。 植物には寒すぎるのだろう。 「年中花を楽しめます」というポップに惹かれ迎え入れた小さな鉢は、一晩で全ての蕾が落…

雲合わせの夕刻

猫街区域は夜のはじめまで空落ちにご注意くださいその後は雲合わせのできる気象条件となるでしょう 立ち上げたままの音声アプリが 風変わりな天気予報を告げる 雲予報士による特別予報で 素敵な音楽の 音符と音符の間に隠されるように流されるものだから 知…

珈琲豆の知らせ-2

執筆に専念しているうちに、すっかり冬景色となった。 もうしばらくすると、出歩くのに少々難儀するようになる。その前に、もう少し珈琲豆を買い足しておくか。 3日ほど前、猫店主から「詩人さん、新しい豆が入荷しましたよ」とお誘いがあったばかり。あまり…

珈琲豆の知らせ-1

「髪、切りました?」 挨拶もそこそこに、店主が問う。 久しぶりに自分でやってみたんだ、と答える。 珈琲豆を詰めながら 「詩人さん、器用でいらっしゃる」 ふふ、と微笑む。 猫街の隅の隅のほう、香り立つとびきりの珈琲豆。宇宙猫とも放浪猫とも噂されて…

思案ごと

軽さで選ぶか、容量で選ぶか。 携帯用バッテリーを選ぶとき、迷いがちだ。軽さを重視したものを持っているのだが、1.5回分しか充電できない。遠出をするときには、いささか心もとないのだ。 かと言って、泊まりがけでもないのに数台を持ち歩くのはどうだろう…

月~空想版「フシギナカラダ」より

明るくて美しくて ずっと昔からそこにあるのに 届かない触れられない 謎が深まるばかりの 近しくて命を惑わす天体 ランキング参加中詩

人生~空想版「フシギナカラダ」より

喪失と選択の連鎖をもって 紡がれていく時間のこと ランキング参加中詩

優しさ~空想版「フシギナカラダ」より

忘れたり理解不能になりやすい だから 自分でもそうするし 人にも分けてもらったほうがいい 時々でいいから 忘れないために わからなくならないために ランキング参加中詩

買物

時折、人らのようにすっくと立つことを選んだ猫そっくりの店主が営む店に出かける。 季節初めの香りで出来た緑の酒。 懐かしい嫉妬心を呼び覚ます、それだけのクッキー。 葡萄の形をした、あの生き物の心臓。 それらを10グールメずつ買い求めるのが、わたし…

準備はいいか

くろいとりくろいとり 準備はいいか 人らの願い人らの欲望人らの祈り 準備はいいか くろいと り くろいと り 準備はいいか 人らの妬み人らの希望人らの呪い 蹴散らしていく準備は いいか

器~空想版「フシギナカラダ」より

光が溜まりすぎて 押し出される闇を うけとめるものを言う あるいは 押し出される前の混沌が 詰め込まれたものを指す

美味しいもののこと

傷つけるわけじゃない 抱きしめるわけじゃない ただ吸いとるんだ 愛するわけじゃない 貫くわけじゃない ただ吸いとるんだ あやめるわけじゃない 散らかすわけじゃない ただ吸いとるんだ ランキング参加中詩

冬眠するんだろうか

寒くなったのか 大きい猫の恋人でもできたのか あの子を見かけなくなった 僕も自分ちの大きな猫の隣か 膝の上が定位置で うつらうつらしながら 冬を満喫している 窓の外に鳥や葉っぱがくるくる踊って 素敵な時間が生まれ続ける ご先祖様は冬眠していたんだろ…

大掃除

住む人が居ないと、家は死ぬんだよ 兄が珍しくロマンティックなことを言った。 外界から隔てられ、薄暗くかび臭い。 ここが祖父とほんのいっとき暮らしていた家ということらしい。 昔のことは? 体育祭に来てほしいとねだった食卓ぐらいか 我々兄弟の記憶も…

時計の多い家

大きなのっぽの…という歌い出しの曲ではないが、とにかく時計の多い家に生まれ育った。 祖父母から受け継いだもの、贈答品、何かの懸賞、まだ珍しかったデジタル表示のもの。 バンドの交換ぐらいは父も見よう見まねでやっていた(器用な人ではあった)。 あ…

誰かの不幸せを 誰かがそう名づけました それでいて 誰かの幸せを 誰かがそう呼ぶのです 人らはほんに 興味深い生き物だこと