猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

2016-04-01から1ヶ月間の記事一覧

きれいなままの

きれいなままの水底は やはりどこにも見つからず のぞきこめば乾きが増すばかり きれいなままの想い出は やはりここでも幻で 抱きしめれば苛立ちが増すばかり きれいなままの遠い空 やはり昨日の夢の中 のぞきこめば後悔が増すばかり

夜上がり

夜上がりにひとりたてば 灰色雲が迷いこむ 夜上がりにひとり遊び 灰色雲のかぞえうた 夜上がりはひとりしずか 灰色雲に身をまかす

Page-turner

譜面台の横 ほんの微かな衣擦れ 奏でるままに呼吸を合わせ 指先が動いた 壊れた日々も 不確かな仕打ちも 今なら笑い話ですむのに ささいなきっかけで バランスを失った 譜面台の横 ほんのわずかな吐息 奏でる指先は迷って もう日々は戻らない

3色ムースの空

3色ムースの空の下 黄色い花を摘みました 3色ムースの空の下 冷たい人ねと泣きました 3色ムースの空の中 苦さがどんどん広がって 3色ムースの空の上 もう会えないねと囁いた

すっかり騒がしい心にも どうか朝が訪れますように

地動

明日 まだ泣いているかもしれない 空の色がすっかり消えて 木々の色もすっかり消えて 雨が降って心もぽっかりなっちまって 明日 また泣いているかもしれない 山の色がすっかり消えて 川の色もすっかり消えて 風が吹いて心もぽっかりなっちまって そんな時間…

だいじょうぶ

星がかくれんぼしてるね 月も雲からでてきそうにないのかな 目をつぶるのはちょっとこわい 風のおしゃべりもちょっと苦手 でもだいじょうぶ 星がかくれんぼしてるね 月も雲からでてきそうにないのかな ほら 時計は後ろに戻るのをあきらめた いっしょに眠ろう…

寒がり

透きとおった心臓が 涙を流している 傷つけるくらいなら やさしい言葉を 忘れるくらいなら 熱い抱擁を 迷うくらいなら とびきりの笑顔を 寒がりな心臓に注ぎ込んでください

冷たい頬のまま あえぐように見上げる赤い空 もどかしさと哀しみが 今日も傘を重くする 冷たい頬のまま あえぐように見上げる春の空 懐かしさと哀しみが 今日も傘に降り続ける

名前のない気持ち

ささやかな朝の光と ささやかな温もり 名前のない気持ちがこぼれて ただきみを抱き寄せた

4月に。

砕けた星を もう一度拾い集めた 心が「元通り」に近づくように

とけるまでもう少し

光がたっぷりとけこんだ“夜”は かすかに身じろぎして そっと横たわる 朝の想い出を 届けにきたんだ 遠慮がちに居心地悪そうに 夜はそっと横たわる 朝を連れてくる時間まで あと少し 光がほどけ始めるまで あと少し “夜”がとけ始めるまで もう少し

眠る人

あなたの感情の中に わたしはもういないのだけど あなたは今でも わたしの感情を動かしている あなたの景色の中に わたしはもういないのだけど あなたは今でも わたしの景色を彩っている わたしから一番遠い時間に 眠っている

まだ覚えている

愛したことを 心臓がまだ覚えている 触れられたことを 喉がまだ覚えている 失ったことを 両頬がまだ覚えている

背中越しに光が落ちて わたしの欠片を隠してく 追い抜きざまの薄い影が あなたの欠片を崩してく 遠ざかるほどに引き寄せられ 近づくほどに引き裂かれ 触れ合えば秘めやかに 羽毛が揺れた 魂の行方をたずねても 答えはついに返らなかった 焦がれるほどに悲し…

ほんとは

こうして なにげなく過ごしていても ほんとはまだ とても遠いのでしょう ふたりの時間は幸せだったと 笑えるまで

想いゴト

ににんがし にさんがろく そんな風にころがして さんにがろく さざんがく 逡巡もせずこぼれるものを しにがはち しさんじゅうに 積むように ごにじゅう ごさんじゅうご あなたにぶつければよかった 九九を覚えたての少年のように

新月

色のない風の行方に 触れることも出来ぬまま ひたすらに心が追いかける 色のない光の渦を 読み解くことも出来ぬまま ひたすらに時が追いかける 色のない影の形を 確かめることも出来ぬまま ひたすらに涙が追いかける

料理

薄くスライスして ソースで和えて ぴかぴかの皿に盛りつけられる そんな風に出会った あなたが見ているわたしも わたしが見ているあなたも 複雑な味と香りを纏って 時間に食べられ続けてる

莫迦みたいに

莫迦みたいに幸せ 莫迦みたいに愛して 莫迦みたいに不確かでも 莫迦みたいに大好き 莫迦みたいに愛して 莫迦みたいに探すから 莫迦みたいにぎゅっとして

メモランダム

生まれるのではなく 生み出すのでもなく そこにずっと漂っていて 起こされるのを待っている 何もかも見え過ぎる日 何もかも見つからない日 それでも 生まれるかのように 生み出すかのように それはずっと漂っていて 起こされるのを待っている

トートバッグ

新しい普段着で 知らない路地を歩く トートはまだ固くて 詰め込みすぎて 装いすぎて 少し重たかった 新しい普段着で 知らない空のした トートはまだきれいで 昨日と今日を 互い違いに織りながら 都会の匂いを嗅いでいた

名前をつけようとした

花が散るさまの とどめておけない光景の 消える淡雪の 涙がこぼれる前の 種のような心象に 名前をつけようとした

あなたの中でわたしが散って

あなたの中でわたしが散って わたしの中であなたも散って 幾ばくかのうたと 幾ばくかの吐息が あとに残されました あなたの中のわたしは散って わたしの中のあなたも散って 幾ばくかのときと 幾ばくかの愛が そこにありました

ごろん、と食卓に転がして そのままソファに倒れ込む 今日を 何通りの声で 何通りの顔で 何通りの名前で 過ごしたのだろう そして 明日を 何番目の主張で 何番目の色彩で 何番目の涙で 満たすのだろう ごろん、と食卓に転がして そのままソファに沈み込む 安…

くるくる

くるくると 秘密をたたえた瞳 くるくると 愛を隠したしっぽ くるくると 喉を鳴らして くるくると 回ってみせる ほかに何も してあげられないけど ここにいるよ きみがきみを思いだすまで

空褻居(くうけい)の木

断末魔を食べて育つ 巨木の上に引っ越しました ごめんね いつもの部屋には もういない 会いにきてね 約束だよ ※褻居…居間、いつもいる部屋

旅を脱いで

旅を脱いだいつもの夕方 西日はまだ心地よく 桜並木に降り注ぐ 旅を脱いだいつもの街角 北風は少し冷たく 桜並木を揺らしている 旅を脱いだいつもの食卓 木綿のパジャマをさらりと羽織って 桜並木を眺めてる

部屋

この部屋の片隅で青空を見た 傷つく前の言い訳を探す 三角の空 そういえば 温もりをくれたのは ちぎっても傷つかない 雲のような人だった この部屋の片隅で青空を見た 傷ついて泣く前の 三角の空

鍵穴

わたしたちは みえない鍵を握りしめてうまれてくる 使い方も 扉の名も知らぬまま ひたすらに鍵がおさまる先を 探すのだ 鍵先が折れ心も折れて 誰かと取り替えたいと願っても 使い方も 扉の名も知らぬまま ひたすらに鍵がおさまる先を 探すのだ わたしたちは …