ビルの窓から
地元民に愛される小さなスーパーが見える
仕事終わりにでも覗いてみるか
と思ったら
すでに棚はほとんど空っぽらしかった
お米なんてほら
早めの昼休みをとっていた同僚が
手に入るだけありがたいわよと
500gの米袋を見せてくれた
明日からは
しばらくテレワークになるけど
マスク越しのくぐもった声
ああ
心配いらない
資料も備蓄も大丈夫だよ
そうね
つき合ってた頃も
あなたは抜かりなかったわ
同僚は少しだけ懐かしむ表情になって
そういうとこ
本当は苦手だったのよと笑う
きまり悪さを隠して
じゃ
午後もよろしくということで
仕事モードの声を装う
そうね
ここを空っぽにするわけにはいかないものね
人のようにすっくと立った僕らは
本物の猫のようにていねいに顔を洗うと
互いの尻尾の具合を確かめ
業務に戻って行った