猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

緋色のアイスコーヒー#1

文献によれば

雪だるまの満月とは

空の端っこがほんのちょっぴり剥がれ

まるで雪のように降ることがある

いわゆる“落ち空”や“降り空”といった

気象ごとの一種だと考えられている


現代のように

どこぞに空が落ちて

すっかり冷え切るまでは近づくこともできない

などということもなかったのでしょうね


一説には

想いびとに会える印だと言われることも

あるようだ


店主の淹れた

“緋色のアイスコーヒー”を飲みながら

僕たちは静かに会話した


小さな足音が近づいてくる

猫そっくりの店主は黙り込むと

急に尻尾をゆらゆらさせて

まんまるな瞳になった


これはこれは珍しいお客様だ

いらっしゃいませ


こんにちは

やさしい声の持ち主は店主に声をかけると

僕のいるテーブルにやってきて


わたしも同じものを

だってわたしが名前をつけたんですもの


“緋色のアイスコーヒー”を注文した