文献によれば
雪だるまの満月とは
空の端っこがほんのちょっぴり剥がれ
まるで雪のように降ることがある
いわゆる“落ち空”や“降り空”といった
気象ごとの一種だと考えられている
現代のように
どこぞに空が落ちて
すっかり冷え切るまでは近づくこともできない
などということもなかったのでしょうね
一説には
想いびとに会える印だと言われることも
あるようだ
店主の淹れた
“緋色のアイスコーヒー”を飲みながら
僕たちは静かに会話した
小さな足音が近づいてくる
猫そっくりの店主は黙り込むと
急に尻尾をゆらゆらさせて
まんまるな瞳になった
これはこれは珍しいお客様だ
いらっしゃいませ
こんにちは
やさしい声の持ち主は店主に声をかけると
僕のいるテーブルにやってきて
わたしも同じものを
だってわたしが名前をつけたんですもの
“緋色のアイスコーヒー”を注文した