初めて空が落ちた日
雲がいつもよりうんと少なくなって
まるで岬にいるみたいに
びゅうびゅうと風が吹いた
“空はいつか落ちるもの”
そんな不思議な歌を教えてくれた
休暇中の先輩に思わず電話した
しっかりしなさい
わたしたちは雲予報士
この日が来ると昔からわかっていたはずでしょう
すぐに向かいます
ラジオの雲予報はお願いね
落ち着いた声にぼくはまた
救われる
ラジオ用の原稿をととのえて
幾度も舌にのせ体になじませると
心がようやく凪に近くなってきた
そして
幼い日に迷い込んだ
やさしい一族が暮らす窪みを思った
“そうさねえ”が口癖の