猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

2019-03-01から1ヶ月間の記事一覧

終わり雪(句)

終わり雪 猫と眺める窓辺かな

マーブル色の種

緋色の植木鉢に マーブル色の種まいた 幾何学模様の葉っぱがひらり 誰かの夢を運んでる 緋色の植木鉢に マーブル色の種まいた シマシマ模様の花びらひらり 誰かの幸せ教えてる 緋色の植木鉢に マーブル色の種まいた 雨降り虹かけ鳥の羽根 誰かが歌を奏でてる

縁ありて(句)

縁ありて 集う人らのあたたかさ ことほぐ声もやわらかく萌ゆ

矛盾を抱えて今日も歩く

矛盾を抱えて それでもなお命は尊く美しい あなたはそう言うのでしょう 矛盾を抱えて それだからこそ命は輝きを増す きみもそう話していましたね 好きな天気が昨日と今日とで変わるように 季節の営みが時に許せなくなるように 優しくできる日と 傷つける日 …

母に似た人(句)

母に覚ゆひとの手とりてやをら歩む 見たりし映画の話しつつ [訳] 母に似た人の手をとってゆっくり歩きました 観ていた映画の話をしながら

風やすみの岬-2

森はずれに住む三つ目のもとに 詩人屋さんは遊びに行くところです あの日に借りた頑丈そうな傘を 大事そうに抱えながら 鍵しっぽにいつもより気持ちをこめて 歩いていくのでした 空が降っても星が降っても どうということはないのさ だが あんたら猫にはそう…

雨宿り(句)

雨避きて 二番館のキネマかな

ブラックコーヒーにオランジェット

絶望にすら絶望したら ブラックコーヒーにオランジェット これ以上 苦くも甘くもならない日の ひそかなおまじない 弱虫で口下手でうまく笑顔がつくれない 自分の心にすら絶望したら ブラックコーヒーにオランジェット これ以上 苦くも甘くもならない日の ひ…

咲くほどに(句)

咲くほどに いと口惜しき麗しさ [訳] 桜の花が開くたび その美しさに嫉妬してしまうのです

ごきげんのスイッチ

コーヒーの香り おぼつかないウグイスの声 フローリングがいつもよりやさしい きみのなぞなぞが3秒で解けた 仕事帰りのシネマ 小さなスイーツ ふたりの笑顔 落ちるのをやめた空

時が過ぎても(句)

時過ぐとも 悲しみ深し春の午後

だからそのまま

耳に心地よければ 呪いの言葉でも受けとれそうだ 男は後ろ手にドアを閉めてから ほう、とため息をついた すごくすごく 好きではなかったが ひどくひどく 嫌いだったことはなく だから そのままでじゅうぶんだったのだ 広がり続ける平行線の幅を 狭くしようと…

巣作り猫(句)

春走る 巣作りねこまをまもる朝 [訳] 風の強い春の朝、まるで巣を作るように猫が毛布にもぐりこんでいるのを、見つめています

風やすみの岬-1

トーザ・カロットの岬に いつもならびゅうびゅうと風が吹いているのですが “空落ち”がぴたり!と止まった頃から “風やすみ”も頻繁にあらわれるようになりました 年がら年中 風に吹かれることが当たり前 そんな岬に暮らしているもので なんだか忘れ物をしたよ…

片想い(句)

今日もまた 恋しと言われで 平気なる顔をす [訳] 今日もまた「あなたが好きです」と言えなくて 平静を装っているのです

とても空っぽ

そこにあったんだ ふと気づく日は 大体においてとても傷ついている そこにいたんだ ふと気づく日は 大体においてとてもさびしい そこにしまってたんだ ふと気づく日は 大体においてとても空っぽ

天気雨(句)

天気雨 きみの泣き顔隠す街

親子

「もう?」 「うん」 虫が惑うのを確かめながら 老母と短く言葉を交わす 「ずいぶんと」 「そうだなぁ」 手ぬぐいで汗を拭えば 山はすでに笑っている 「なんとも」 「ほんとに」 風がさわさわ頬なでて 老母と短く言葉を交わす 「この星も」 「かもね」

恋(句)

たわむれも 恋の始まり四月莫迦

猫は焦げ色

猫は焦げ色 金の風を連れてきた 桜ひとひら山桜 春の光でおめかしおヒゲ 猫は焦げ色 銀の風を連れてきた 今朝は雨降り雪まじり 前足ぷるるひんやりお耳 猫は焦げ色 金と銀の風を連れてきた 今夜は月もかくれんぼ 喉がグルルゆらゆらしっぽ

猫(句)

やわらかく しなだれかかりて ねうの声 [作者註] ねう〜現代語で“にゃあ”。猫の鳴き声のこと。

ふるふると

ふるふると凍える思いを もてあまして またぞろ人の記憶について 思いを巡らせていたのです 遠い もしかしたら人になるかならないかの ほんの 宇宙のカケラでしかなかった頃から始まって 数え切れないほどの思いと 数え切れないほどの輪廻の果てに この命が…

身をゆだね(句)

身をゆだね 心遊ばす音だまり

まだらの月を煽って

まだらの月を煽って ここまでおいでと 舌を出す 生半可な風と雲を 味方につければ 孤独は怖れるに足らず まだらの月を煽って ここまでおいでと 指を立てる 軽はずみな魔法と恋を 味方につければ 平静は壊れるを知らず

こわれ星

こわれ星 青く光りて回れりかし

女は半笑いで世界を眺めている

壊れかけた星は ただ悲しみに包まれ 降りそそぐ雨は 美しい灰色に染まった 女は 片づけるでもなく 散らかすでもなく 半笑いで世界を眺めている 日々が崩れ去ったのは 誰のせいでもなかったと 妙に冷静に眺めている 壊れかけた星は ただ悲しみに包まれ 降りそ…

美しく(句)

美しく やがて悲しきひな流し

例えばそれがあとでとても僕を傷つけるとわかっているのに

きみさえよかったら 頼まれてくれないかな あなたがメールをよこすのが ひどく嬉しくて 例えばそれがあとて とても僕を傷つけるとわかっているのに なんでもないよ なんでも言ってよ すぐさま返信してしまう きみなら そう言ってくれると思ってたの 助かりま…

春霞(句)

春霞 わびしくなりき 空の色

あなたが好きです

季節が堂々巡りを始めた昼下がり あたしはコンビニでアイスコーヒーを買う そういえばいつからか シロップをふたりで分けて ちょっぴり甘いコーヒーをホルダーに並べるのが ドライブのお決まりになって ダイエットは明日からにする! とっくに成功してたけど…