猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

風やすみの岬-1

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トーザ・カロットの岬に

いつもならびゅうびゅうと風が吹いているのですが

“空落ち”がぴたり!と止まった頃から

“風やすみ”も頻繁にあらわれるようになりました

 

年がら年中

風に吹かれることが当たり前

そんな岬に暮らしているもので

なんだか忘れ物をしたようでもあり

ちょっぴり嬉しいような怖いような

知らない国に来たような

 

自分の足元がふわふわ漂っているみたい

 

詩人屋さんは

ほんとうの猫みたいに

戸棚の後ろに隠れたくなりましたが

思いとどまって

そのかわりに頑丈そうな傘を返そうと

森はずれまで出かけることにしました

サコッシュにはいつか拾った空のカケラを

大事に入れて

 

雪だるまの満月がのぼる夜

ふらふら森に迷い込んでしまっても

落ち空がひとかけあれば大丈夫

 

猫にも三つ目にも雲をよめる人らにも

雪だるまの満月や空のカケラは

たいして悪さをしないのに

どちらかだけだとたまにいろんな

それこそ

猫なら戸棚の後ろに隠れたくなるようなことが

起こるらしい

 

詩人屋さんはイカ耳になると

いつもよりちょっぴり鍵しっぽに気持ちをこめました

そうして雪だるまの満月とにらめっこしながら

森はずれへと急ぐのでした