猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

雲予報士の娘に生まれて〜トーザ・カロットの人々

父と母は職場結婚だそうで

母の先輩っぷりにほれぼれした父が

一方的に求婚したという話を

だいぶ大人になるまで信じてきた

 

あとから知ったほんとの話はもっと複雑で

なるほど

我が子に話しにくいことではあったろう

 

あたし

空の色や天体が終わりに近いことが

見えるんだよね

どうしたらいい?

 

思春期の頃

誰もが居場所をなくす季節

岬の毛糸屋さんに思いきって打ち明けた

猫そっくりの店主は

ちっちゃい子をあやすようにしっぽを揺らして

まん丸の瞳でこう言った

 

ゆっくりでいいから

たどたどしくていいから

自分の言葉で話してごらん

赤ちゃんだった君に

最初の靴下を編んでくれた人たちに

 

そうして少しの間

まあるいふかふかの手で

あやとりの相手をしてくれた