父と母は職場結婚だそうで
母の先輩っぷりにほれぼれした父が
一方的に求婚したという話を
だいぶ大人になるまで信じてきた
あとから知ったほんとの話はもっと複雑で
なるほど
我が子に話しにくいことではあったろう
あたし
空の色や天体が終わりに近いことが
見えるんだよね
どうしたらいい?
思春期の頃
誰もが居場所をなくす季節
岬の毛糸屋さんに思いきって打ち明けた
猫そっくりの店主は
ちっちゃい子をあやすようにしっぽを揺らして
まん丸の瞳でこう言った
ゆっくりでいいから
たどたどしくていいから
自分の言葉で話してごらん
赤ちゃんだった君に
最初の靴下を編んでくれた人たちに
そうして少しの間
まあるいふかふかの手で
あやとりの相手をしてくれた