猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

冬の入り口-3

へろへろと帰宅した。

冬の入り口は相変わらず見つからない。ほんの欠片を見つけては、誰にも知られぬよう空に返すくらいのもので、霜も手の冷たさもその時に一瞬味わうくらいである。

今夜はどうだろう、と若干身構えつつ、ドアの前に立つ。

街灯にキラキラと反射する扉。やれやれ。思い切り息を吹きかけ飛び退いた。

 

びよぉぉぉ〜

 

ひんやりした何かが鼻先をかすめ、空にのぼっていく。

早朝、霜くらいはおりるかもしれない。

冬の入り口なんてものは、詩人には見つからない場所に隠しておけばいいのに、といつも思う。

雪が降り始めるまでは、こうして相手をしなくてはならないのだが。

 

そうそう、言っておくが詩人は嘘つきだ。

実はこっそり冷凍庫に冬の入り口を隠して、好き放題している…かもしれないよ。