木枯らしが吹いた。
なんとなく、この間ドアから無理やり剥がしたものが影響してるのかとソワソワしたが、そうではなく本格的な冬の到来であるらしい。
たかだか扉一枚分の“冬の入り口”をどうこうしたからと言って、その地方一帯の天気予報になるほど大それたことは、そもそもできないのである。
あれは単なる気配でしかないから、そうそう悪さをするものでもないはずだ。
詩人さんが木枯らしを吹かせた!
詩人さんが寒くした!
詩人さんのせいで冬になった!
…などと噂されても、困るのだ。
人らより、猫に嫌われてしまいそうで困るのだ。
まあ「いらっしゃい、詩人さん」と出迎えてくれる、猫そっくりの店主は気にしてないようだから、後で珈琲豆でも買いに行こう。