猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

オレンジ

雨のスクリーンが冬を連れ戻して

僕はまたオレンジの香りを探してる

 

寒いのは嫌いなくせに

マフラーも手袋もすぐ失くして

「きみのポケットがいちばん好き」と

小さな声で言った

 

その冬もデコレートされたトンネルを

歩くはずだったのに

あなたは

「これ以上きみの想い出が増えなくてよかった」と

なんでもない風に小さな声で言った

 

寒いのは嫌いなくせに

ふたりで会う朝には必ず

オレンジのシャンプーで髪を洗うから

「遅れそうなの」と

小さな声のメッセージが残った

 

雨のスクリーンが冬を連れ戻して

僕はまだオレンジの香りを探してる