猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

マーマレードといつか降る空-3

君と出会った頃

とても大切でとても愛してた人と

お別れしたばかりだった

 

“すれ違い”

一言で片付けてしまえれば

お互いもっと引きずらずに済んだでしょうに

傷口にグッサリくるような言霊も

“ふふん”と受け流していたでしょうに

 

雲を読めないあの人と

雲を読み続ける自分とのあいだに

どんどんたまり続けた澱は

ついに濾すことができないまま

紙をビリリと破るように

ひとりとひとりになった

 

君は

ただの同僚で後輩で

雲を読む資質があって

あの人が

理解の範疇ではないと嘆いた“おしまい”のことも

知っていた

 

果物屋さんでアルバイトしたこと

ごろんごろんしたみかんの話

海に落ちた流れ星

もつれてしまった恋模様

二本足で生きることを選んだ猫たち

窪みに暮らす不思議な人らのこと

 

マーマレードを塗った

薄切りトーストをかじりながら

ぽつりぽつり

君に話した

 

いつか降る空の行方を追いながら