足先が急に冷たくなって
空が遠くなった朝
迷う風もなく歩く人らと
すれ違う
耳を満たし目を満たし
指先だけで世界を捉えたつもりになって
銀杏がカサカサ降って
モズが悲しげに鳴いても
誰も気づかず行ってしまう
耳たぶが急に冷たくなって
空が遠くなった朝
迷う風もなく歩く人らと
すれ違う
耳を満たし目を満たし
指先だけで知識を蓄えたつもりになって
金木犀の香りにも
コオロギのか細い歌にも
誰も気づかず行ってしまう
やがて
人らの群に巻き込まれ
誰にも気づかれず歩いていく
耳を満たし目を満たし
指先だけで愛を語る愚か者になって