猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

愚か者

足先が急に冷たくなって

空が遠くなった朝

迷う風もなく歩く人らと

すれ違う

 

耳を満たし目を満たし

指先だけで世界を捉えたつもりになって

銀杏がカサカサ降って

モズが悲しげに鳴いても

誰も気づかず行ってしまう

 

耳たぶが急に冷たくなって

空が遠くなった朝

迷う風もなく歩く人らと

すれ違う

 

耳を満たし目を満たし

指先だけで知識を蓄えたつもりになって

金木犀の香りにも

コオロギのか細い歌にも

誰も気づかず行ってしまう

 

やがて

人らの群に巻き込まれ

誰にも気づかれず歩いていく

 

耳を満たし目を満たし

指先だけで愛を語る愚か者になって

 

 

f:id:Sala-Y:20190714110454j:plain