猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

片付けと誇り

自慢、と位置付けると 慢心が全てを拭い去ってしまいそうだが 誰かの何かの参考になるのなら 悪くはないだろうか 靴を 靴箱を空にするのである できれば年に一度といきたいところだが とにかく 大掃除ついででも腹たちまぎれにでも 理由づけなんぞはどうでも…

抱負と柵(しがらみ)

11月、冬の「ふ」の字もないうちに 決めておいた 全てに当てはまり 全てをあらわし 全ての意味になる 季節のよろしいときは 多少ガツガツして 季節の厳しい折には 多少静かに暮らす 誰とも同じでない時を 誰とも比べることなく 過ごすのである せきとめるも…

繰り返し

誰彼ともなく いつもより念入りに磨き始めて それは唐突に終わる 少し半端に残ったとしても そこはあまり気にせずに 朝はやってくる 古くなるなどあり得ない 夜もまた同様に 同じ時間は二度紡がれない 瞬間ごとに生まれ変わって 瞬間ごとに何かを忘れては ま…

侵食されたい

新しいことに侵食されたい そう願う日々が今年もやってくる 侵食され続けて いずれは黒々した感情が消えるなら あの人への妬みも この人への理不尽さも まあそんなには不条理ではないだろうと 上書き なんて単語ほどスッキリした感覚でなくていい いつもいつ…

呆れるくらい底なしだ

生まれることも 死ぬことも、忘れている ネコもどきたちはそんな命を持っている 欠片ほどの魔法すら ままならない身としては ふむ、そのくらいながらえたなら 自在に季節も操れるようになるだろうかと 夢を見る (そして「寒いわよ」と苦笑いされる始末だ) …

遡る

時計の針を川の流れを 割れた器を あなたの人生をあの瞬間の言葉を 破った手紙を止まない雪を きみが決めつけたわたしの偶像を ランキング参加中詩

わたしの大事な

わたしの大事な 壊れびと わたしを忘れた 愛しびと あなたが育みあなたが守りあなたがいつしか 手放した わたしの嫌いな壊れびと わたしを壊した愛しびと あなたは不幸と未来を天秤にかけて 鈍色の水を干す わたしの大事な 壊れびと わたしを忘れた 愛しびと…

忘れもの

忘れものをした 昨夜の湯船に沈めて そのままなかったことにした 忘れものをした 今朝の早起き鳥にさらわれたので そもそも持ってなかったことにした 忘れものをした さっき木枯らしにのって見えなくなったから もう泣かないことにした

命はいろんなもので出来ている

それがとても優れていて 認知もされて みんなやってるよ または 限定だよ って (先人の知恵や病的に弱ってしまった時の助けはともかく) 誰かの編み出したメソッドで ほんとのほんとに何かを得られると ほんの一瞬思い込んだとしても よほど自分の血肉にな…

詩人さんと青色の家

猫街の海が見える小さな土地に、 これまた小さな…そう、なにかのかみさまを祀った 小さな青色の家がある やたらと珈琲豆に詳しいあの店の店主によれば、 「わたしたち猫モドキを、昔の人らが勘違いしたのでしょう」 ということらしい 雪のない、よく晴れた昼…

さわらず捨てるもの

慌てず騒がずさわらず開かず。 不思議な雰囲気の、心当たりのない便りが届く。 俗に「迷惑メール」と呼ばれているものだ。 昼夜を問わず(寝ている時間帯も届いていた)送られてくるので、初めのうちはギョッとした。 覚えのないSMSも頻度は多くないが届く。…

なにしてた?

去年の今日 なにしてた? あなたのことで多分 あたふたしてたっけ 手帳はメモだらけ スケジュールもぎっしり よく息をして よく生きていたなと 笑い話のように思い出す 去年の今日 なにしてた? わたしのことは多分 後回しにしてたっけ 着るもの食べるもの …

愛だけでいい 今、だけでいい

嘘をつくなら にっこり微笑んで フェイクな通知に リボンをかける(すっかり束ねて燃やすのよ) 受け取るのも手渡すのも 愛だけでいい 未来、だけでいい 今日なんていらない 昨日なんていらない 明日を呼び戻せるなら 未来を信じられるなら 愛だけでいい 今…

詩人は嘘をつく

詩人は、幸せだと嘘をついた。 だから、ひとときだけでも誰かが笑ってくれたのだ。 詩人は、不幸だと嘘をついた。 だから、ひとときだけでも誰かが寄り添ってくれたのだ。 詩人は、全て嘘だよと言った。 夢かうつつか、あなたにはわかっているはずだ。 ラン…

狡く迷う

遥かの島で人が燃えて わたしは泣くしかできなかった 遥かの国で大地が崩れ わたしは祈るしかできなかった 誰かの隣であなたが睨む わたしは黙るしかなかった あなたの隣で誰かが消える わたしは見ているしかできなかった ランキング参加中詩

ざわざわ不安が起こり ざわざわ引いていく ざわざわ希望が湧いて ざわざわ消えていく 絶えず絶えず 残らず残さず 夢を持たねばなど 夢を探せなど 深く深く 熱く熱く 不揃いのリズムで 不確実な対応して それ以外は消え去って また不安を呼び起こす ざわざわ…

偽物になって

誰も知らない名前になって あたしは歩く 誰も知らない気分を抱いて あたしは笑う 誰も知らない色になって あたしは叫ぶ ほら 偽物はここだよって 探しびとはあたしよって 誰も振り向かない 誰にも見つからない 誰かの真似もしない 元から偽物なんだもの 誰も…

人らともしも

もしも全てがストップしたら どうなるんだろう 怯えは確かにあった それは突然起こって たちまち広まった もしも全てが流れだしたら どうなるんだろう 怯えは確かにあった それは突然終わって たちまち消え去った もしもに怯え もしもに晒され もしもを蹴散…

終わりを満たすもの

すべてが疎ましく すべてが悲しく すべてが妬ましく すべてを手放して すべてに涙し すべてを悦び すべてをうけいれ すべてに感謝する うけとるそばからこぼれても いいじゃないか 他の誰かがうけとって また巡り巡るのだから 愛は回る 愛はめぐる 目にもと…

あなたはきっと知ってるね

オレンジショコラの色の空 あたしはキジネコ抱きあげる あなたはきっと知ってるね だって オレンジショコラの色だもの 今にも落ちてきそうな空の オレンジショコラの色の空 あたしはキジネコ抱きしめる あなたはきっと知ってるね だって オレンジショコラの…

10月

くるくると不安になる 10月の声を聞くたびに 残された今年はこぼれていくだけだと くるくると不安になる 10月の声を聞くたびに 手放したことは多いはずなのに 失い足りないと自分を責めるのだ くるくる不安になる 10月の声を聞くたびに 水の冷ややかさと 夜…

そうして星に食べられながら あるいは星を喰い散らかして

風にのって届くのは 夏忘れの噂と秋始まりの調べ 奏でるかみさまたちは それぞれをつまみ食いしながら ひとあみひとあみ 季節を縫いあげる いつかは秋が濃くなって いつかは夏が消え去って 溶けた体のことなども記憶の向こうに追いやって そうして星に食べら…

最後は

最後は 誰が締めくくったのだろう 最後は どこにいる時だったろう 思い出すのは 恋に奔放な主人公が物語の終盤 足を滑らせる場面 そのあとどうなったのか そのときどんな気持ちでそこにいたのか とても昔 その本に出会って 主人公が大嫌いになった そのくせ…

遠雷は本当のきみ

幸せの貯金をしましょう 天に空に 辛い時ほど自然に貯まる 何も考えずとも 何も悩まずとも きっときっと今日が終わる 遠雷はきみの叫び 遠雷は本当のきみ 幸せの貯金をしましょう 天に空に 辛い時ほど自然に貯まる 何も考えずとも 何も悩まずとも きっときっ…

かみさまの置き土産

同じ1日も同じ空も ありえないのに まるで今日はいつか出会った時間の 置き土産のようだ ほら ラジオでは聞き覚えのある話と 昔々の綺麗な曲 戦いが終わったというニュースが 流れているよ 夢を開く鍵は 遠い昨日に置きっぱなして 夢を閉じる蓋は いつだっ…

かぼちゃ

かぼちゃ餡になって ふわふわ包まれる 秋はそんなふうに始まるのだ 色とりどりの 音とりどりの すくうそばからこぼれ落ちて 最高気温ってなんだっけ にわか雨ってあんなに激しかったっけ 無責任に呟けば 人らはようやくほっとひと息つけるのか かぼちゃ餡に…

ある日。

誰かに叱られそうな、申し訳ないような、その中にほんのり勝った(何に?)感も混ざっており、兎にも角にも体と心のベタつきを洗い流す。 早い時間に帰宅し、あわよくば入浴まで明るいうちに済ませることがある。 昨日は、そんな午後だった。 空気を入れ替え…

遠く渦を巻く塊が 嵐を伴い近づいてくる 過ぎる頃 どことなく朝夕の涼を感じるものだが なぜか 遠く渦を巻く塊は いつまでもいつまでも 同じ場所にとどまって ぐるぐる回り続けている 南の熱く湿った風だけを 律儀に運んでくれるものだから うっすら曇って蒸…

揺れ

思い出す悲劇 忘れる喜劇 思い出せるヨロコビ 忘れてしまうカナシミ 覚えている不安 忘れゆく日常 ランキング参加中詩

よろこびと嫌悪

両立はしないだろうが 同時に湧き上がることはあるわけで 人心の混迷にわれながら戸惑いを隠せず 成立もしないだろうが 彼方此方から向けられることはあるわけで 人心の混迷にわれながら戸惑いを隠せず 倒立でもしてみれば そのまま散歩でもしよう いつもの…