猫街の海が見える小さな土地に、
これまた小さな…そう、なにかのかみさまを祀った
小さな青色の家がある
やたらと珈琲豆に詳しいあの店の店主によれば、
「わたしたち猫モドキを、昔の人らが勘違いしたのでしょう」
ということらしい
雪のない、よく晴れた昼間
青色の家を訪ねる
この季節には珍しい雨を愛でるために
鍵がかかっていたことはない
誰かに迎え入れられたこともない
ただドアノブを回し
こんにちは、また来ましたよ
家がびっくりしないように声をかける
カーテンもないのに
風もないのに
やさしく空気が混ざり合い
窓の外に夜の雨が降り始めるのだ
しばらくの間
雨を眺めていると
こんにちは、お邪魔します
どこからともなくそんな声して
雨の時間が終わっていく
帰りがけに振り向けば
見つめる猫が窓にいて
ゆっくりとまばたきをした