猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

よろこびと嫌悪

両立はしないだろうが 同時に湧き上がることはあるわけで 人心の混迷にわれながら戸惑いを隠せず 成立もしないだろうが 彼方此方から向けられることはあるわけで 人心の混迷にわれながら戸惑いを隠せず 倒立でもしてみれば そのまま散歩でもしよう いつもの…

おまじない

使うことがないものは 手放せばいい でも 迷う迷う迷う 保存が必要な書類やら 頻度は低くとも定期的に使うものやらは ともかく 「あっちの世までは持っていけないから」 自分にも人にもにっこり笑って そう声をかける 小さく開けたり ちょっと軽くなったりす…

やりすぎ注意

昔、占いに人生を捧げているような知り合いがいた。 月初め・年初めには著名な星占い師の著書を買い求め、血液型うらないを頑なに信じこみ、新聞の占い欄にくまなく目を通し、手相占いにも足しげく通う。 どうせ、悪い運は星のせい。 だって、〇〇座だから。…

偽善者

夢の中でなら 妬みも嫌味も自由自在だ 夢の中でなら 隣にいるのが誰だろうと自由自在だ 夢の中でなら 憎悪も悲哀も好き放題だ だからあたしは 今夜もよく眠れない ランキング参加中詩

この道

この夜を明けて この朝を抜けて この道を辿る この命に飽きて この景色と別れて また夢を辿る この夢を明けて この朝を抜けて この命を辿る この道に飽きて この景色と別れて また夜を辿る ランキング参加中詩

確信

布を裂き紙を裂き ガラスを引っ掻いた そうまでしてようやく 「今日も生きてる」 そう確信する というよりどこかで絶望することに 安心を覚えるのだ 手放すことは日常になり 入れる知識は邪魔になり 乾いたり潤ったりしながら いずれ腐っていくものらしいが …

心模様

空模様が揺れている 恋の終わりがけ 実らぬと悟った先の あの時間のように 空模様が揺れている 子ども時代の終わりがけ 戻らぬと悟った先の あの時間のように 空模様が揺れている 初夏の始まりがけ もう一歩と誓った先の あの時間のように ランキング参加中詩

くらう

春は多分 去年よりずっと短くて あなたを見つけるのは至難の業だ 出会ったら最後 喜びに震えながら その黄色い体を引き裂くのだ そうして次の春までの間 あなたはわたしを構成するものになり わたしはまた渇望を繰り返す 待ち遠しい狂おしい あなたを引き裂…

春休み

休みなんだって 何が 人生が でも続いてるよね でも続くんだよね 途切れたら 途切れ、たら… 後悔しないの 後悔しない 会えたから 会えたもの 生きて 生きたから ランキング参加中詩

愛を届ける人

これみよがしにふりまくよりも 根深くじっとり憎むように 愛を届ける人になりたいのだ 奥底からとりだすのだから もうどちらでもない 区別もつかない 言葉ですらないものを 後生大事にしたところで 一生きみには届かないのだ ボルトを締め上げるような 伝え…

春があたしを洗っていく

わざと光あふれさせて 春があたしを洗っていく 追いかけて追いついて 罪も闇も消え去るほどの 見事に光をあふれさせて 春があたしを洗っていく 傷つけて傷ついて 猛スピードの花吹雪に 寡黙に光をこぼしながら 春があたしを洗っていく 思い出も恋も ドアの奥…

逃れた先で紡いだ言葉は かえってわたしを束縛し いい子でいようと繕う笑みが かえってわたしを脆くする 強くいようと紡いだ言葉は かえってわたしを傷つけて 聡くあろうと繕う心は 今日も空へと堕ちていく

イベントはありません

今日もまた 「イベントはありません」だ 例えばスマホを見られても 変に詮索されぬよう カレンダーアプリへの書き込みは避けている (それで約束を忘れたこと数知れず) これではイカンと 手帳をいちどきに3冊も買ったあの年 月に一度は後悔してた 本当の本…

何処

失ってなお追い求め 追い求めてなお届かぬ道の 乱れた足並み時しるべもなく よりどころは命にあらず 失ってなお追い求め 追い求めてなお届かぬ道の 崩れては重ねては 寂れた命のかけらすらなく よりどころは肉体にあらず

雪の日(愛を受けとるだけの器になって)

瞬間 世界から色も音も消えた この扉は心ほど重くはなかろうと 押しあけたのが運のつき 瞬間 世界から言葉も時も消えた 足元から白く頭上へと軽く 舞いあがるものに 抵抗はしなかった 瞬間 体から生も死も消えた 天上から降り注ぐ愛を 受けとるだけの器にな…

「あんなやつ…!」と口走ったあと

「あんなやつ…!」と口走ったあと 「もうね、とんでもなく誰より幸せになってしまいやがれ!」 そう付け足しておく 呪いの言葉より愛の言霊を 愛の言霊より心からのハグを 空想だけでも伝わらずとも 自己満足であっても傷ついても たとえばほんのひとときで…

いらない

土曜なんていらない 家に帰りたくない日、そんなことを考える 日曜なんていらない 誰も帰ってこない日、そんなことを考える 時は巡り月は巡り季節は巡り それでもたまに「いらない」と心がざわざわする 懐かしい苦さを伴いながら

わたしの知らないはなし

マスクを捨てた 冷却シートは真夏用に少し残して 友達にあげた 熱冷ましの錠剤は 一箱だけ残して 心配性の親戚にあげた 大気はいつどうなるかわからないし 海も空も澱んだり霞んだり 大地にごろごろするなんて 今では誰もやらなくなった わたしは知らない そ…

時々尋ねてみたくなる

もう使わないだろうか もう捨てるだけだろうか 彼方へ連れられていくことも 彼方から呼び戻すことも できないのに 時々尋ねてみたくなる ほんとは好きでそうしていたのだろうか ほんとはそれほどでもなかったのだろうか 彼方で語り合うことも 彼方から連絡を…

冬のケガ

冬のケガは治癒に時間がかかる。 心も同じく。 乾いては裂け広がりやすく、 いつの間にかタラタラと流れ出る。 傷つけたりしない、誰かが言う。 だが、 感情爆発のタイミングは不意に訪れ、 庇うつもりの暴言もまた世界にあふれている。 冬のケガは治癒に時…

命を人を

悲しみを生きるか 哀しみに沈むか 喜びを生きるか 喜びに溺れるか どうあったとしても短い 時を泳ぎながら 深く想いなさい 強く祈りなさい 命を人を愛しなさい

苛立ちを隠すなら微笑みの奥に愛を忍ばせるなら瞳の端に

宇宙を編み続けるのなら 時間軸があればいい 宇宙が膨張し続けるのなら 夢だけがあればいい 苛立ちを隠すなら 微笑みの奥に 愛を忍ばせるなら 瞳の端に 好きと嫌いが混在するたび 無防備な自分を突きつけられるのだが それすら糧に 今日も生きるのだ

そうでなければ、そうでないなら。

揺らがない。たとえ世界が滅んでも。 そんな言い草は夢物語の飴玉にでも閉じ込めておけばいい、とは思うが、ここへきて現実と妄想が入れ替わりそうな心持ちになってくる。 心持ちだけでは、平和は訪れない。 心持ちさえなくなったら、平和を人らは忘れる。 …

愛があふれる人に触れるたび

愛があふれる人に触れるたび 愛が死ぬようで 愚かなことよと苦笑しつつも 羨ましくてならない 愛が止まらぬ人に触れるたび 愛を殺すようで 思い過ごしよと苦笑しつつも 鼓動のスピード隠している 愛を求める人に触れるたび 愛を抱えたふりをする 何をどう言…

今日を待たずに休みは明けて

今日を待たずに休みは明けて ぼくのため息深くなる 秋を待たずに魔法がとけて ぼくの心がひび割れる 混乱するのはいつものことだが 天気だけではないようで 感情体調憎悪に愛情 渦巻きながらたちのぼる 今日を待たずに休みは明けて ぼくのため息深くなる 秋…

寂寥

秋の海辺みたいだ この悲しさは 手放した感情まで 繰り返し押し寄せる 秋の海辺みたいだ この寂しさは 手放した言葉さえ ヒタヒタと押し寄せる 秋の海辺みたいだ この時間は 見失った背中にさえ 指が触れそうだ

musique

舌を満たすそれを 呼びだせるなら幸せだ 心を満たすそれを 味わえるならもっと幸せだ 耳を満たすそれを 奏でる日々はかなり幸せだ きっと死ぬまで幸せだ

アメと雨

季節は記憶をなくしていた 狂った恋の あなたの向こう側で 風は香りをなくしていた 溺れた恋の あなたの背中で 想い出は光と闇に汚れ ねじれた鎖の如く絡みつく 会いたい アイタクナイ 忘れたい ワスレタクナイ

かき消される声だけを

かき消される声だけを 花瓶にいける 剥がれかけた記憶だけを ジュエリーボックスに片づける 流さなかった涙だけを 心に蓄えて ほんの少し俯いて笑う 空を見上げるのはその後でいい 正直になるのはその時でいい かき消される言葉だけを 鞄に詰める 剥がれかけ…

手足は星につながれて

心を自由に羽ばたかせるのは 難しいことじゃない 手足は地面につながれて 命は器に属するものだが 心はすでにここにあらず はるか銀河を越えていく 心を自由に羽ばたかせるのは 難しいことじゃない 手足は星につながれて 命は時に属するものだが 心はすでに…