猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

ベレー帽と猫そっくりの店主-2

猫そっくりの毛糸屋の店主は

自分用のベレー帽を編むために

“毛糸屋さんのいない街”へ旅をして

緑の香りがする風と

浮かぶ海の波音と

黄色のリサラヌアの花に出会いました

 

大事に大事に持ち帰り

無事に毛糸玉に“kanade”を染み込ませている

ところです

 

今回は

昔ながらのゆっくりした方法で

“kanade”をこしらえることにしたのでした

 

作り方はざっとこんな感じです

 

まず

緑の香りがする風と

浮かぶ海の波音と

黄色のリサラヌアの花びらを

大鍋にあけました

 

そのまま火を入れると

焦げてしまうので

新月の夜明け

凍りつかないうちにと

湖で汲んだ水を

とぽとぽとぽ

 

それから

栗の木のお玉で

くるりくるり

やさしい火加減で

とろとろとろ

 

人らが同じように

くるりくるりとやったら

あまりの幸せに満たされ

鍋の前で眠り込んでしまうでしょう

 

人らのように

すっくと立ち上がることを選んだ猫も

もしかしたらもしかするかも

 

猫そっくりの毛糸屋の店主は

めったに使わない

しばらく起きたまま

という魔法を自分自身に施しました

 

そして

ていねいにていねいに

“kanade”の材料を混ぜ続けるのでした

 

f:id:Sala-Y:20191104130410j:plain