猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

ベレー帽と猫そっくりの店主-3

三日三晩大鍋の中を

栗のお玉でくるりくるり

やさしい火加減で

とろとろとろ

 

美しい“kanade”が出来上がりました

 

久々に風どまりの朝

猫そっくりの店主は

まだ熱々の“kanade”の鍋を

よいしょよいしょと

店の裏へ運び出しました

 

それから

雪の中に半分ほど埋めて

 

かぜとまりかぜながれ

あめふらしゆきつもり

 

三度呟きました

魔法というより

おまじないみたいなものですが

言霊を聞きつけた岬の生き物たちが

お鍋を守ってくれるので

安心して

“出しっぱ”にしていられるのでした

 

お鍋がひっくりかえらないように

もういちどだけ確かめて

猫そっくりの店主は店に戻りました

そして

寝床にはいってから

自分に施した魔法を解いて

夢の中へと誘い込まれていくのでした

 

f:id:Sala-Y:20191101211511j:plain