三日三晩大鍋の中を
栗のお玉でくるりくるり
やさしい火加減で
とろとろとろ
美しい“kanade”が出来上がりました
久々に風どまりの朝
猫そっくりの店主は
まだ熱々の“kanade”の鍋を
よいしょよいしょと
店の裏へ運び出しました
それから
雪の中に半分ほど埋めて
かぜとまりかぜながれ
あめふらしゆきつもり
三度呟きました
魔法というより
おまじないみたいなものですが
言霊を聞きつけた岬の生き物たちが
お鍋を守ってくれるので
安心して
“出しっぱ”にしていられるのでした
お鍋がひっくりかえらないように
もういちどだけ確かめて
猫そっくりの店主は店に戻りました
そして
寝床にはいってから
自分に施した魔法を解いて
夢の中へと誘い込まれていくのでした