猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

ベレー帽と猫そっくりの店主-4

つるりつるり注意報が

頻繁に発表される季節です

 

お店を開けられないこともたびたびなので

猫そっくりの毛糸屋の店主は

いっそのこと

雪がすっかり消えるまでは

お店をおやすみにして

自分にも冬眠の魔法を施して

ぐうぐう眠ろうかという気持ちになりました

 

でも

眠ったままだと

魔法を自分で解くことができないので

やめておくことにしたのでした

 

今日は

毛糸玉が気分よく

“kanade”を染み込ませているかどうかを

見極めるたいせつな日

 

猫そっくりの毛糸屋の店主は

毛糸玉をみっつ作って

“kanade”に浸しておいたのです

 

毛糸玉たちの眠る台に近づくと

木漏れ日に包まれたようなぬくもりと

心地よい風を感じました

みかんの香りはずいぶんと薄くなり

猫らにも

人らにも

すぐにそれとはわからないほど

 

店主は

まあるい手でそっと毛糸玉を

撫でてみました

 

ざざざ ふわわ さわさわさわ

 

音霊がいちどきに

鳴りました

 

ここでおしまいにしても大丈夫なのですが

ベレー帽を編むための毛糸ですし

音霊をもう少し落ち着かせたほうが

良さそうです

 

店主は

“kanade”の量を微調整して

あとちょっと待つことにしたのでした

 

 

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