猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

緋(あけ)

トーザ・カロットの街の辺りでは

緋色のコーヒー”という飲み物が

猫らの間でも

人らの間でも

とっても人気です

 

もともとは

どこかの遠い遙かの街だか星だかで

猫そっくりの生き物が

緋色の豆で作る飲み物を気に入って

お土産に豆を持ち帰り

それを

人らや森の住人らが

ううむと悩みながら

栽培にこぎつけたとか

 

昔々のそのまた昔のお話なので

もはやほんとのほんとか

だあれも知らないのですが

少し苦くて

少し甘くて

どんな物語にも似合いそうな飲み物を

猫らも人らも当たり前のように

口にするようになったのは

そんなに昔々ではありません

 

ところで

緋と呼ばれるほどの鮮やかな赤は

毛糸屋の店主に言わせると

魔法が強すぎて毛糸には向かないそうです

だから

のんびり火を通して美味しい飲み物にするのが

一番いい方法なのですって

 

溺れかけの小さな青い星にも

この飲み物は伝わっているらしく

“緋色”の部分だけが抜け落ちて

コーヒーという名前で親しまれているそうです