猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

大掃除

住む人が居ないと、家は死ぬんだよ

 

兄が珍しくロマンティックなことを言った。

外界から隔てられ、薄暗くかび臭い。

ここが祖父とほんのいっとき暮らしていた家ということらしい。

 

昔のことは?

体育祭に来てほしいとねだった食卓ぐらいか

 

我々兄弟の記憶もますます朧げだ。

祖父は食事のたびに癇癪を起こすような人で、機嫌よく笑っているところは知らない。

殴られたり心を削ぐような言葉をぶつけられれたことはないのだけど、なんともとっつきにい人ではあった。

 

それでも、作り直せと怒鳴りながらも食事はほぼ平らげてくれていた。

愛情の形は星の数ほどある。

 

マスク持ってるか?

うん、手拭いも

始めるとするか

 

念のため、“人払いの魔法”を家の周囲にほどこす。

そして一瞬だけそろってイカ耳になると、それぞれの持ち場で早めの大掃除にとりかかった。