詩人は嘘をつく。
虚構と現実を見極めた上でね。
敬愛してやまない大先輩が、
悪戯っぽく話してくれる。
画面の向こう側で。
私は自分の未熟さを指摘されたと思い込み、
いつものように少し落ち込む。
深読みしすぎだ、と大先輩がニヤニヤする。
虚構世界を立体的にしたいなら、
少しの事実を混ぜろ。
詐欺師がよく使う手である。
服を着替えるように彼らは虚構を織りあげるのだが、
いくばくかの「本当」がそこにバランスよく配置される。
時代とともに、嘘のあり方も変化する。
詩人もまた、然り。
嘘をついても叱られない人種というのがあるのなら…?
先輩は答えるかわりに、
ま、元気でやりなさい。とだけ言うと、回線を閉じる。
詩人は嘘をつく。
虚構と現実を見極めた上でね。
敬愛してやまない大先輩が、
悪戯っぽく話してくれる。
画面の向こう側で。
自分の、イカ耳のしかめっつらが
真っ黒の画面に反射する。
通信しながら尻尾を振り回したから、
クッションはすべて床の上だ。
先輩には気付かれていただろうか。