猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

心を診る猫の医者-19

甘いお菓子に 苦いお茶 それらは頭と体を いっときほぐしてくれます そのあと 「もうひとふんばり!」 あるいは 「美味しかった〜大満足」 もしかしたら 「ちょっとだけなら」と おかわりする日もあっていい ですが 心に重た目の荷物を抱えた人らのすべてに …

かみさまのろうそく

かみさまは ろうそくに灯をともされました 星の半分は朝になり 星の半分は夜になりました いいときも そうではないときも 星は回り続けています 昨日も今日も明日も 息づくものどもに悟られぬほど スピードと傾きを微調整しつつ 廻り続けているのです かみさ…

豆でもいかが?

影ふたつみつ 揺れ隠れ ばばさまゆっくり豆洗う 光さんさん じれたよに ばばさまことこと豆を煮る 鬼さんこちら かってもまけても逃げやせぬ 豆でもゆるりと食うていけ

あたしを隠す

そのうち冬は もっと濃くなって あたしを隠す やっとようやく 気兼ねなく 足跡残して 飛び跳ねる 耳を澄まして 少し怯えて そうっとそっと 小首かしげ また ひたすらに走ってく そのうち冬は もっと深くなって あたしを隠す 愛と祈りを織りあげて

詩人(シト)日記-2

夜の10時00秒に ピココン!と合図が送られてきた 攪拌し水分を飛ばしておいたのを これから漬け込むのである ほんの少々 ネリネリねりねり 決してねちっこくならぬよう 尖っていればすこおし丸く 鈍いようならすこおし削り 丁寧に漬け込んで ようやく一日が…

たぶん

たぶん 宇宙のあちら側には いいことが満ちていて 宇宙のこちら側には そうでもないことが 満ちている そう思えば そんなに腹も立たぬ 星は回り続けるのだし いれかわりも 逆転も たえず起きているのだから たぶん 宇宙のあちら側もこちら側も それほど変わ…

星こし茶-2

今年の星こし茶は また格別だねえ 空をはめ込んでいたネジが 緩んできてるのが 見えるじゃないか ほら 星がこんなにも流れるだろう あれがネジの正体さ ばらばらばらばら 心の底に音をたててふりそそぐ 刺のある言霊や 考えなしの単語を舌や指先から 散らか…

詩人(シト)日記-1

目覚めて最初に 浮かび上がった単語をいくつか 感情のアプリに入力して 攪拌する 今朝は「季節」を強めに設定し 「事実」や「記憶」はやや小さな数値に しばらくして 「ぎぃぃ」と鳴るのでとりだせば まだやわやわである 「涙」が少々混ざったようだ 「水分…

心を診る猫の医者-18

悲しみの成分と 喜びの成分はとてもよく似ていて どちらも涙を運んできます 初めての恋が 甘いながらも苦く感じてしまう それと同じです 今日は悲しみが30パーセント 残りのすべては嬉しいこと 昨日は悪いことがふたつ だからとても運が悪いんだ 何もかもが …

心を診る猫の医者-17b

慣れないことだけど やってみたくてもできなかったこと そして 時間を気にしなくてもいいこと 完成させなくちゃ!…じゃなくていいし 誰のためでもなくていいし 誰かのことを思いながらでもいいし 自分のためだけだって構わない それを つらつら書き出して こ…

星こし茶-1

拙作品の中に 空が落ちる星のお話があります あなたはあり得ないと笑うでしょう 天井じゃないんだからと 確かに空はいつでもそこにあって 何気なく 祈りや哀しみを 時には憎しみを 投げつけることができる 委細構わず 空も生きている ぶつけられれば 汚れた…

休診日-C

居場所は たくさんでも ひとつだけでも なんなら ないような気がしても なんだか毎日違うなあ ここかな? あっちかな? それでもいいのです 体の居場所と 心の居場所が バラバラになることは とてもとてもいけないこと! そういう考え方もあります でも例え…

トーザ・カロット岬の毛糸屋さん〜風どまり茶〜

なんで音が鳴るんだよ! 風どまりの晩秋の朝 岬の毛糸屋さんに 飛びこんできた人がおりました お茶を入れていた猫そっくりの店主…の弟は 心の中だけで目を白黒させましたが 1年…いや数ヶ月に1度ぐらいは トゲトゲの言霊を抱えてくる お客さまがいらっしゃる…

架空言の葉処-3「芯」

集団の中にあっても冷静さを失わず、空気感に染まりすぎず、距離感を保つすべを失わずにいること また、それを他者に押しつけないさま ぶれないこと、あるいは軸と呼ばれることもある

架空言の葉処-2「不安」

両肩に満月の気配を感じること あるいは盗み見られているように 思う様子 特に深夜の時間帯に多い

星廻し

4分の1回転して ようやくほうと 息をした これからは もっと慎重にしないといけない どこかで そんな声がした 風を磨いても 雨を呼ぶことが難しく なったように 4分の1回転させるのも いつのまにか力仕事に なってしまう 錆びていても 心とやらに光があ…

架空言の葉処-1「孤独」

絶えず昨日の自分が敵になることを指し、生きながら折り合いをつけること

心を診る猫の医者-17a

有頂天になったら どうしよう いい気になってやがる そう思われたら どうしよう 僕はなんてことない 平凡で目立たないのが 気に入っているんだ ひっそり生きていたいんだ なのに なんだか注目浴びちまうんだ ああ 孤独でいたい どうすればいいでしょう 心を…

架空言の葉処-3「芯」

集団の中にあっても冷静さを失わず、空気感に染まりすぎず、距離感を保つすべを失わずにいること また、それを他者に押しつけないさま ぶれないこと、あるいは軸と呼ばれることもある

架空言の葉処-2「不安」

両肩に満月の気配を感じること あるいは盗み見られているように 思う様子 特に深夜の時間帯に多い *フリー素材

心を診る猫の医者-16

絶望が始まりでも いいんですよ 希望に満ちて ワクワクして 光に導かれる始まりなんて そんなにはありません 大丈夫だろうか うまくいくのかな そんな風に 慎重になりながら 始める それでも良いのです そのまま ブレーキという呪いを 自分自身にかけてしま…

架空言の葉処-1「孤独」

絶えず昨日の自分が敵になることを指し、生きながら折り合いをつけること *フリー素材

詩人は嘘つきか、嘘つきだから詩人なのか

決まってるわ 嘘つきな時もあれば 正直な時もある 詩人の顔をしている日もあれば 猫の顔で街を歩く日もある それが仕事なのでしょ 楽しそうで何よりじゃない ふたつほど向こうの星から 先輩が呼びかけてきた どこにいようが 誰といようが いつもと変わらない…

トーザ・カロット岬の毛糸屋さん「息子ども」

いつもであれば メールかLINEで済むところ 声が聴きたいと 嬉しいことを言う息子ども 何をねだるでもなければ とりたてて近況報告でもなかろうに リモートワークを早々に切り上げ スカイプを開始する もう〜親父さあ LINEしてからにしてよ 頼むよ、とぼやき…

心を診る猫の医者-15(休診日)

気づいてから そろそろ3ヶ月になるだろうか それまでは 置かれた花びらが 彼より1枚少ないことに 疑問すら抱かなかったし 誰が置いたか確かめもしないので 始まりがいつだったのか 実は知らない ボクと彼との場所が どこだったとしても 律儀にそれは行われ…

心を診る猫の医者-14(休診日)

ある日 言葉を探すのにも 歌を紡ぐのにもほとほと疲れて 心を診る猫の医者のもとを 訪ねた 人の姿をしていない友人たちの中で 人のためにも医者をやってる奴は 彼ぐらいではなかろうか それはともかく 友人に診察してもらうというのも 公私混同しているよう…

おやすみ

うつろに響く校舎のチャイム 1年生も2年生も3年生も 4年生も5年生も6年生も だあれもいない 色とりどりの紙吹雪が 夢にあらわれ 今日こそみんなに会えるかと 早起きしたのに 門の外には 先生がふたり おやすみになったから 今日は帰りなさいと ゆらゆ…

心を診る猫の医者-13

ドロドロでベタベタで 弱っちくてずるいんです それが本当に本当の 自分の芯にある いっそ 体から心を全て切りとって ゴシゴシ洗いたい だけど 誰に話しても 人はみんなそんなもの だの 考えすぎだよ 莫迦だねえ だの 真面目に受けとってくれる 人間はいない…

押しつけ屋-4

昼休みに部署へ行き 打ち合わせと立ち話の中間程度の 会話を交わす のんびりした社風でもあり いざとなればテレワークもあるので 無理して出勤せずとも 咎められはしない 見下ろせば スーパーの駐車場は ひどく混んでいて 人らの焦燥感が このビルまで漂って…

押しつけ屋-3

翌日は 昼からの勤務 少し早めに家を出た 受けたバトンは さっさと手放すに限る 通りを10歩と進まぬうちに ひそやかなため息3度 まるで自分の鼓動にも似て くっきりと 託す相手をしっかり見定め 「好きに使いなさいな」 その人の手に 小さな包みを握らせ 風…