猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

心を診る猫の医者-18

悲しみの成分と

喜びの成分はとてもよく似ていて

どちらも涙を運んできます

 

初めての恋が

甘いながらも苦く感じてしまう

それと同じです

 

今日は悲しみが30パーセント

残りのすべては嬉しいこと

昨日は悪いことがふたつ

だからとても運が悪いんだ

 

何もかもが

そんな風にはっきりすっきりしていれば

わたしの出番は必要ない

 

割り切れないこと

プラスでもマイナスでもないこと

どちらにも思えること

それは

どんな命の上にもおとずれることです

 

心配いりません

時間はいつでもあなたの味方なのですから

 

先生、あのひとと別れたのは

ずいぶん前なのに涙が止まりません!

 

涙をぽろぽろさせながら

そう訴える男性に

心を診る猫の医者は

自分の恋物語をほんの少し話して聞かせました

そして

「お大事に」のかわりに

「にゃあおん」と鳴いたのでした

 

*「心をみる猫の医者」未収録作品

心をみる猫の医者