猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

近況

冷却ジェルの箱らが

若干うらめしそうに

こちらをじっと見ている

春のうちに

「この夏は異様に暑くなる」と聞き及び

少しずつ買いためておいたのである

 

それからすぐ

大怪我に見舞われたり

治癒と同時に家族の病気が発覚したりで

棚に押し込んだ冷却ジェルのことを

脳裏からも追いやっていたのだった

 

出番が多かったのはむしろ

ボディシートたちのほうで

ネットショップで買い求めたのが

存外に早くため息と同じく底をつき

通院ついでに買い足した

 

家族の通院に付き添ううち

酷暑は過ぎ

木々は色づき

風は心地よく

マスクにもこまめな消毒にもすっかり慣れた

 

幸い

家族はめきめき快復し

元気に暮らしている

 

冷却ジェルの箱らが

若干うらめしそうに

こちらをじっと見ている

 

また出番はあるよ、と声をかけ

扉を閉じた