猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

恋〜 一行詩 〜

見送り

いつまでも聴いていたくなります

水温(ぬる)み

いつかの歌ほど

春の雨が降る頃です

やさしいさびしい眠りだけを

やさしいさびしい眠りだけを あなたにそっと届けましょう 潜れど潜れど浮きあがる 鳥によく似た魚のように やさしくさびしい眠りだけを あなたにそっと届けましょう 潜れど潜れど濁りゆく 底なし夢の奥の奥 さびしくやさしい眠りだけを あなたにそっと届けま…

しかし私は鍵を開け

キミが壊れないように 言霊で守りましょう 不幸に気づかなくてもすむように 心に鍵をかけましょう 寒さがつのれば抱きしめる 暑さがつのれば木陰で過ごす あの子に負けないように生きなさい あの子を見返してやりなさい さあさ 心の鍵はしっかりかけて 何に…

夢をみた

美しいことだまだけを 咲かせたい 手渡されるたび誓うのに 咲くのは泥の色した花ばかり 「そこが人間ぽくていいじゃない」 きみはそう言いました あの虹を渡りながら

会員証

グググ、とシュレッダーがストップする 苦笑いして保留モードを 解放してやり もういちど起動させた こんなことになったのは 初めてではない 実は もう使わない会員証を いちどきに手放そうと思ったのだ 足繁く通ったCDショップ あなたがママ友らと競うよう…

リアルに枕を抱いて眠るなんて 「うそでしょ」 そう思っていた 一人だからさびしいのは いつものことで 二人だから孤独が増すのも 体感済みで もやもやと言葉にならない喪失感が 深く深く あたしの中で広がり続ける リアルに枕を濡らすなんて 「うそでしょ」…

夕焼け

その日 夕焼けは蒼く澄みわたった 熱い思いと冷たい風が 頬に触れては遠ざかる あの日 雨が落ちたことも忘れて カーディガンも羽織らず 出てきてしまったから ぶるると震えた その日 夕焼けは蒼く澄みわたった 熱い思いと冷たい風が 頬に触れては遠ざかる

寝返り

心臓が 上になり下になり また上になる あなたがくるまで 祈るように繰り返している 空が 上になり陰になり また上になる あなたを抱くまで ため息のように繰り返している

季節のうた

ソリティア

イラスト:はんペンさん

僕の心

君の心

おこぼれ

思わず目を背けた 美しかろうが 乱れようが 一律に同じ名前で呼ばれることに 辟易したのである 恋人に優しくしたついでの 甘い時間の残り香を きみは愛だと言い放つ そうしたいなら それもよかろう あたしじゃない 誰かに手渡した後の おこぼれなんて 舌の上…

キミノナカデ

閉じ込められたいのだ 音符になって 言葉になって 心の行間にくっきりと 閉じ込められたいのだ 光でもなく 影でもなく 心の片隅にくっきりと 刻まれたいのだ あたしがあたしの輪郭を失っても キミノナカデ 閉じ込められていたいのだ ぐっとぴさんによる写真A…

きみを待つ

鼻の脇を少し気にして あたしは ゴムを引っ張った “止まない雨がないのなら” 2時間遅れのきみをなじりたくなって 慌てて 右手ごとスマホをバッグに追いやる きみは 約束なんてしなかったことにして 遠くからあたしを見てるのかもしれないし きみの 乗った電…

想いあふるる

だから。

あなたはあたしを 苦くえぐって 食べてしまうの だから いつも空っぽになる あなたはあたしを 深く抱きしめ 壊してしまうの だから いつもひとりぼっちになる あなたはあたしを 甘くほどいて 刻んでしまうの だから あなたの思い出に なれないの 1123_daさん…

思ったのです-3

しかと日付を思い出せないが そんなに最近のことでも そんなに以前のことでもなく なんとなくつけたテレビに “こうやって掃除するんです” 除菌用スプレーと布巾を手にした人が 大袈裟だのやりすぎだの そんなコメントを まるで気にする風でなく リズミカルに…

やがて返ってくるものについて-A

fujiwaraさんによる写真ACからの写真

如月

もしかしたらと

来ないはずの人を それでも もしかしたらと待っている ここにはいないよ 仕事やめたみたいよ あの国にもいないって SNSのアカウントも閉鎖されてるよ 星のどこにいても 見つけられる自信があったのに 星のどこにいるのか 見つからない事実を突きつけられる …

始めてはみたものの

冬は深くあなたは遠く

どんなにやさしい雨が降っても 冬はまだ深く どんなにやさしい風が過ぎても 春はまだ遠い どんなにやさしい言の葉並べど あなたの声はもう届かず どんなにやさしいhugをされても あなたの抜け殻しか見あたらない

届かぬ想い

さよならを 敬語で書けば ありがとうになる

24時間以内に

停止しましょう あなたのアカウントを 消してしまおう あなたのデータを そうすれば ここにいてもいい理由が 生まれるのだから 停止しましょう あなたのアカウントを 消してしまおう あなたのデータを そうすれば まだあたしのままで生きていい理由が できる…

金木犀

甘い香りが心を毟る あの日の記憶が暴れて あたしを傷つけた 花が咲けばきみを想い 花が散ればあたしを哀れみ 優しい言葉さえ 涙で崩れていく 甘い香りが心を毟る あの日の記憶が暴れて あたしを傷つけた 灰兎さんによるイラストACからのイラスト

再会

大好きだった瞬間と もう離れたいと泣いた時間を くらべるでもなく 並べるでもなく 切り離した たやすいこと 少し心をかたづけておけば 体のほんの片隅に そう思ってた 大好きだった瞬間と もう離れたいと泣いた時間を とりもどすでもなく 望むでもなく 消去…