猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

2015-01-01から1年間の記事一覧

やさしさを揺れる

泣かないでいること 泣けないでいること 笑わないでいること 笑えないでいること 人は揺れる やさしさを迷って 揺れる

ずぶぬれの月

さまよう心に ずぶぬれの月 歌が生まれる ほんの一瞬 甘いヒカリ さまよう体に 粉々の月 命があらがう ほんの一瞬 眩むヒカリ

四角の箱

天使の横顔みつめていたら 四角の奥で何かが生まれた 天使の横顔みつめていたら 四角の中で誰かが呼んだ 天使の横顔みつけた日から 四角の中からもう出られない 夢から出られない

こんなにあなたを愛してる

さよなら昨日 こんにちは明日 こんなにあなたを愛してる

知らない歌が

知らない歌が なつかしく耳をくすぐって 知らない声が やわらかく僕をかき乱す 知らないメロディが 身体中を満たして 知らないきみの 手を握りしめた

何も言わない

かみさまは わかっている だから だまっている かみさまは なにも言わない 知っているから はじめも おわりも

同化

その日 溶け残ったカプセルは やがてゆっくり染み込んで あなたと同化する 善意の欠片も 悪意の欠片も

おはよう

おはよう世界 まだ死なないでね

57の言霊で

57の言霊で あなたを抱きしめる ありふれた 短く甘い単語たち ひとつひとつに 心をこめて あなたにあげる 57の言霊で あなたを傷つける ありふれた 短く苦い単語たち ひとつひとつに 涙をこめて あなたにあげる

気まぐれなバケモノ

世界は気まぐれな バケモノだから 愛も哀も こんなに満ちている 世界は気まぐれな バケモノだから 茫も暴も こんなにあふれている 世界は気まぐれな バケモノだから 逢も崩も こんなにうごめいている

指先から投下される 雨霰の音節たち 誘蛾灯に引き寄せられる 無数の“音” はじめは おそるおそる つぎからやがて 大胆に 徒党を組んで あるいは 群れる自覚すらなく あちらからこちらから ふだんはひとりの 善良な命 ふだんは愛に生きる やさしい誰か そんな…

やさしい人たち

かなしいニュースと やさしい人たち 群れになれば やさしさ忘れ かなしみをつつきあう さびしいニュースと やさしい人たち 群れをなすほど やさしさ失い 歪んだ笑顔の草ならぶ

7月47日の約束

7月47日に会いましょう そんな約束を交わした 秋の入り口 7月47日に必ずここで きみの言葉をなぞるように 舌にのせた 夏の出口 セミが押し黙った 色とりどりの空

旅に出るわけ

ただいまを言いたくて 旅に出る おかえりを聞きたくて 旅に出る ほかに大事なものは そんなにないような気がする

きっと必ず

転んでもいい 逃げてもいい 泣いても叫んでも いい 笑えるから 笑い飛ばせるから きっと必ず

たくさんの

たくさんの私、たくさんのあなた、 たくさんの空、たくさんの風、 たくさんの雨、たくさんの夕焼け、 たくさんの別れ、たくさんの出会い、 たくさんの願い、たくさんの朝、 たくさんの、涙 たくさんのありがとう

古びた傘

ふりそそぐのは何だろう あびているのは何だろう うんとうんとふくらんで いつのまにか破裂して パラパラとふりそそぐのは何だろう この身にあびているのは何だろう 古びた傘を 無理矢理開いて閉じこもる こわいものをあたしの外に閉じ込める

帰路

みちみち月が みちみちみちて みちみちひかる みちみちこいし みちみち月を みちみちあおぎ みちみちてらす みちみちかえる

一期一会

もう会えないのだろう 多分 似ていてもきっと違っている そう いつかと同じ風だと思っても それは 似ているだけで二度と会えない だから この命に生きる この命と生きる 一期一会の命を抱きしめる

楽欲

食欲、独占欲 睡眠欲、序列欲、、、 何を語り 何を唄おう 何を欲し 何を捨てよう 業を背負い 業に抱かれ 楽欲の何を知ろう?

いつもの引き出し

涙の隠し場所は いつもと同じ引き出しに 嬉しくて 悲しくて 飲み込んだり 伝えられなかったり 流されなかった涙は いつもと同じ引き出しに 心の やわらかい場所に

透明な空

透明な空が 伸ばした腕に絡みつく 透明な空の まだ向こう側にいながら 昨日の夢が甘く叫ぶ 透明な空と ひたむきに見つめ合う 波に浮かぶ抜け殻になって

濾過されてなお

光も翳も 大気のフィルターでやわらぐのに きみの言葉は濾過されてなお 心に突き刺さる 二度と抜けない矢のように ずっしりと突き刺さる

ぬくもり

胸の痛みに気づくのは 手を離したあとで 傷の痛みを知るのは もっと遠い日で 涙が苦いから 初めて温もりを知って 空が遠いから 失くしたものを探さずに いられない

海風

大きくふくらむ 服のすそ さらりと黒髪流れ 海がざわついた 小さく固まる 砂の山 ころりとスコップ転がって 足もとがふらついた 大きくふくらむ 服のすそ さらりと黒髪流れ あの人が消えた

またあしたね

ねむれねむれ いい子ちゃんのあたし だだっこのあたし ねむれねむれ いばりんぼのあたし すまし顔のあたし ねむれねむれ 冷めてるあたし やさしいあたし あしたまたここで 遊ぼうね

装う

転んだり落っこちたり そんな様を手ぐすね引いて 待ってるんだ 転んだり落っこちたり そんな様を今か今かと 待ってるんだ 正直者を装った もろい正義が広がって きっと誰かが泣くんだ どこかで泣くんだ

Sky

心が映っている 心に映っている わたしが映っている

かなしいうた

悲しい歌が肩に寄り添い 夢の残り香立ちのぼる 白の季節は風を染め 現(うつつ)の記憶を呼び覚ます 悲しい歌を舌にのせ 今日も塊飲み下す

ふれあい

オレンジ色の雨の中 意味のない音節は甘い香りを放ち いつか消える だけど 忘れないと言い続ける だから 忘れないと言い続ける 忘れないと伝え続ける オレンジ色の雨の中