猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

揺れ

「おっと」

 

ごく小さな段差を車が踏んだ

拍子に揺らいだ指先が

画面のどこかを踏んだらしく

ずらり並んだアプリが

ぷるぷると震え出した

 

運転中の男友達が

平気か?と前を向いたまま訊くので

平気だよ、と返し

また画面に目を落とす

 

使ってないものもずいぶん増えたな

今ならなんの躊躇いもなく

消してしまえるのに

 

昔のパートナーは

こちらがスマホに明るくないと見るや

あれもこれも、と勝手にアプリを入れ込むような

ありがた迷惑と親切の中間地点を生きるような

奴だったっけ

 

今は

簡単なプログラムくらいなら

動かせるようになったものだから

ふたりはうまくいかなくなったのかも

でも

アプリを入れすぎる傾向は

案外あの人の置き土産だったりしてね

 

出会った全てが宝物

出会った全てが自分の血であり肉であり

心なんだろうねえ

 

車の揺れが一定になる

バージョンアップもできないようなアプリを

いくつかぽんぽんと消して

また過去を少し手放した

 

 

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