ぼくはささやかに拗ねていた
あれほど急いだのに
夜のあの瞬間の角っこに
いちばんのりできなくて
光がするりと身をかわす
花冷えを独り占めしたいわけでも
闇を抱きたいわけでもないけれど
ぼくはささやかに拗ねていた
あれほど急いだのに
朝のあの瞬間の真ん中に
今日は
いちばんのりできなくて
時間がするりと身をかわす
朝焼けを独り占めしたいわけでも
きみに会いたいわけでもないけれど
体の奥にぽかっと穴が
ひとつだけ
アリスを追いこす白うさぎ
どうかぼくの手を離さないで
穴のそばで見守って