猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

お友達とさらさちゃん

さらさちゃんが中学校の頃

ようやっと

心の底から何でも話せるお友達ができたのです

その子は

ちょっとだけ複雑な…と思われがちな

家庭環境でしたが

自分もどちらかと言えばそうだったので

さらさちゃんはちっとも気にしませんでした

 

やがて

お友達のおかげで

学校に行くのが楽しくなり

放課後もわざと教室に居残りしてみたり

わざとゆっくり歩いて帰ったり

公園のベンチで笑いあったり

今思えば大事な大事な時間を

過ごしておりました

 

やがてそれが

一部の大人たちの間で問題になり

 

チャイムが鳴ったら教室を出て

立ち話は禁止

座り話も禁止

寄り道も禁止

遊びの約束はいちど家に帰って親に許可を得なさい

 

防犯の面からは

確かにかなり有効であるでしょう

何と言ってもスマホなどない頃のことですもの

だけどね

心はそれほどすっぱり割り切れるものではなかった

さらさちゃんもお友達も

成績だけは落とさないよう気をつけながら

何とか学校生活という荒波を泳ぎ続けていたのでした

 

さらさちゃんは

自分の親にお友達の一人を紹介しました

なぜなら自慢の友達だったし

親よりも頼れる存在でしたから

ママはニコニコと大人の対応でお友達を迎えてくれましたが

その夜パパとママに

こう諭されたのです

 

あの子

両親と血がつながってないんだって?

いい子かもしれないけど

親御さんがねえ…

もうお付き合いはやめなさい

頭が悪くなっちゃいます

 

いわゆるグレ子ではなかったさらさちゃんですが

 

血がつながっていようがいなかろうが

関係ないじゃん!

すごくいい家族だよ、おじさんもおばさんもあったかいもん!

パパとママみたいに冷たい人たちじゃないもん!

 

舌の先から

激しい言葉と感情が「どどど」とあふれそうになりましたが

そこで踏みとどまらないと

あとあと面倒だということを

よく知っておりましたので

 

わかったわ

 

一言だけ静かに言いました

そして

「学校の話は家では最小限にしよう」

堅く堅く心に決めたのでした

 

そんな時代があったとしても

大丈夫

まあなんとかそれなりに生きていけるのです

 

でもできることなら

あの頃の自分に会って抱きしめてあげたいなあ…

大人になったさらさちゃんは

たまにそんな風に思うのでした

 

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