浴びるのは、何も水とは限らない。
想いも言葉も
見えない何かも。
届くのは、手紙とは限らない。
想いも歌も
涼やかな森の風景も。
三度デートしたその人は、
音楽ファイルにたった一曲を、
容量の許す限り詰め込むような人だった。
ジャンル違いの音楽を何十曲と、
同じくぎっしり詰め込むわたしと対照的に。
違いを楽しむには至らず、自然消滅のように別れた。
隣にいなくてお互いに幸いだった。
喧嘩が絶えなかったろう。
年を重ねた今は、容易に想像がつく。
だが、昔の恋は時折悪さをする。
同じ一曲をぎっしり…ではないが、
リピート再生を大いに活用しているわたしがいる。
隣にいたかったけれどすれ違った、
あの人を真似て。