10数年ぶりに
カトラリーを処分することにした
食卓を共有した人がどこで暮らしているのか
知る由もない
であれば
カケラほどの気兼ねや後悔は不必要というわけだ
目指しているのは例えば
ロボット掃除機がそこそこ走り回れる家
急な来訪者(修理屋さんとか多少お節介なご近所さんとか)に
慌てずにいられる家
親戚のおチビらに
どの扉を勝手に開けられても
眉ひとつ動かさず
そこは空っぽなのよ
ごめんねえ
なんてことを
すらりと舌の上にのせられる
そんな場所
育った場所は決してそうではなかったが
暮らす場所は理想に近づきつつある
食器を引き出しに片付ける生活に切り替え
ついには
普段使いのものも
そんなに多くなくてよいのだと
確信するようになった
たいそう怠け者の発想じゃないかと
誰かが笑う
それもまた楽しい