猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

彼は猫である。名前は匿名でよろしく。

数ヶ月に一度会う

猫彼がいる

そういうつもりなのは

こちらだけであって

果たして相手はどう思っているのか

とんと見当がつかない

嫌われていないことだけは

ありがたいことに確かである

 

1月下旬にしては

ずいぶんと陽射しが強い

猫が日向ぼっこをしに顔を出す頃合いを見計らって

自宅を出た

 

ほどなく特徴のある「うにゃあおん」という

低い声が近づいてくる

悲しいかな

人の目線と猫の目線は高さがかなり異なる

キョロキョロしていると

脛に「どーん!」と頭突きを食らって

飛び上がった

 

「禍」になってからしばらくは

マスク姿に怯えるようなこともあったが

このところは

防寒対策をして誰だかわからぬ風情であっても

半年ぶりのデート(!)でも

「待ってたよぉ」と言わんばかりに

どこからともなく現れるのだ

 

すり寄ってきたところを抱き上げれば

鼻は濃い桃色に染まっている

猫と暮らしていないので詳しくないが

肉球の桃色が濃くなるとオネムの合図だと

どこかで聞いたことがあったが

鼻が桃色になる猫もいるのだと

彼と付き合い始めて知った

 

適当な陽だまりに腰かけると

そのままウニャウニャと動き回っていたが

コートの袖にしがみつくように

小さくなって眠ってしまった

 

彼は猫である

よそさまの飼い猫であるので

素性には詳しく触れないことにする

 

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