猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

ものぐささんの終活-2

住む人がいなくなると、家はたちまち死に急ぐ。

空気が動かないままになるので、傷み具合が何倍速にもなるのだ。

話には聞いていたが、実家もまさにそういった状態に陥った。しかも、やたらと物が多い。捨てられない人たちだったな、とため息が出る。

 

片付けても片付けても果てしのない作業だったが、幸いなことに大事な書類はひと処にまとめられており、散らかった床のどこかを掘らねば!…みたいなことにはならなかった。

 

筆者を含めた子どもら(いずれもいい大人だ😅)で手分けして、持ち帰れるものは持ち帰る。

ゴミも大量に出すことになった。

それでも処分に困るものはその場に残し、後日プロに任せることにする。

楽器、数多の書籍、骨董品や古銭、服飾品。

ネットと電話を駆使して、これまた子どもらで手分けしてあちらこちらへ問い合わせ、ほんの少しばかり換金できたこともあった。

 

こう書くと冷たいようだが、実家に思い入れのある人間がいなかったことも、幸いした。将来改築してそこに住む、という考えは誰も持たなかった。

面倒ごとは、数え切れないほど多かった。しかし、押し付けあったり揉めるようなこともなく、不思議とそれぞれが得意分野を自然に分担するようになっていった。

 

例えば、公共料金・新聞など何らかの解約手続きは、平日比較的自由に動ける人間が担当した。

権利関係のことは、法律に詳しい別の人間が仕事の合間に進めておいてくれた。

傷がなくじゅうぶん使えるものは、可愛いもの好きの人間が喜んで持ち帰った。

こまごました掃除グッズや、片付けの知恵を存分に提供してくれた人間もいる。

仏壇の処分について詳しい人間もおり、ずいぶんと助けられた。

 

ただただ、感謝しかない。

 

手に余ることは、多少の持ち出しが発生したとしてもプロに任せ、スムーズにことが運んだのである。

ものぐささんなので、一度に多くのことをできているわけではないが、日々何かしらの「終活」と寄り添えるのも、今を生きているからなのだ。