猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

約束

ようやく花散らしも鎮まり、

虹龍さんと森に出かけることにした。

以前からの約束だったのを、

わたしがお腹を下してしまって遠出が危うくなった。

それで、のびのびになっていたのである。

 

雨だろうが、風だろうが、

むしろ虹龍さんには嬉しいことであるようだ。

こちらが起きられるようになった頃、

虹龍さんは花びらだらけで帰宅することが多くなり、

そのたび「素敵でしょ」と言わんばかりに

胸をそらして見せる。

毎度のことながら、つい吹き出してしまった。

 

ようやく花散らしも鎮まり、

虹龍さんと森に出かけることにした。

 

視る力には恵まれず、

それでもリアルにそういう体質の人を数人知るせいか、

ごくたまに、ほんのたまにほんのちょっぴり、

うすぅく龍を見てしまったり、

うすぅく感性が活発になったり。

そんなことが繰り返される。

 

生まれる前の。

この器ではなかった頃の命の。

明らかに今の自分のものではない記憶が

胸を騒がせる。

 

それもそのはず。

この世の中は、見えないものと見えるもので形成されていて、

バランスよく「視える」人らは稀だ。

 

それでも、虹龍さんは言葉ではなく、

そばにいることを教えてくれる。

もったいないやらありがたいやら。

生きるを、足るを、死ぬまで求め続ける。

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