ようやく花散らしも鎮まり、
虹龍さんと森に出かけることにした。
以前からの約束だったのを、
わたしがお腹を下してしまって遠出が危うくなった。
それで、のびのびになっていたのである。
雨だろうが、風だろうが、
むしろ虹龍さんには嬉しいことであるようだ。
こちらが起きられるようになった頃、
虹龍さんは花びらだらけで帰宅することが多くなり、
そのたび「素敵でしょ」と言わんばかりに
胸をそらして見せる。
毎度のことながら、つい吹き出してしまった。
ようやく花散らしも鎮まり、
虹龍さんと森に出かけることにした。
視る力には恵まれず、
それでもリアルにそういう体質の人を数人知るせいか、
ごくたまに、ほんのたまにほんのちょっぴり、
うすぅく龍を見てしまったり、
うすぅく感性が活発になったり。
そんなことが繰り返される。
生まれる前の。
この器ではなかった頃の命の。
明らかに今の自分のものではない記憶が
胸を騒がせる。
それもそのはず。
この世の中は、見えないものと見えるもので形成されていて、
バランスよく「視える」人らは稀だ。
それでも、虹龍さんは言葉ではなく、
そばにいることを教えてくれる。
もったいないやらありがたいやら。
生きるを、足るを、死ぬまで求め続ける。