「では、ね」
押しつけ屋は
あっという間にいなくなり
今やバトンは託された
何を思おうと
何をしようと
自分がやったとわからない
なんと素晴らしき哉!
その日は
ようやくテレワークから解放された
記念すべきひとときでもあり
かと言って
このご時世なので
急務な案件もなく
数時間のちには
空いた電車で帰路についた
「半端に余った」と
押しつけ屋は言ったが
家で包みを開いたところ
まあまあの量である
そこで
ひとつまみ
いや
ふたつまみほど
慎重にとりわけて
残りは見知らぬ誰かに
包みごと託してしまおう
期待がこみ上げ
耳まで裂けよとばかり
にたりにたりと
マスクの下で口角を上げた