古いラジオは父の形見です
ある著名人がなくなった時
ニュースで報じられたほどの珍しい病名で
少々ミーハーなところがあった父は
ひそかに親しみを覚えていたそうですが
なるほど報じられただけのことはあり
なかなか治療が難しく
ほどなくして父は逝きました
さて
遺品整理をしていましたところ
ラジオが山ほど出てきまして
さすがに他人様に差し上げるものでもなかろうと
遺された家族で分けました
おそらくは
アプリという概念すら持ち合わせなかったであろう
頑固者の父の形見は
ガサガサとノイズが入る古い小さなラジオです
誰も見向きもしないような黒い小さなラジオです