猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

詩人屋さんと丸いパン

ティペットの試し編みが

ことのほかうまくいきました

毛糸玉の奏でるサラサラ崩れるような音は

やがて外の雨にかき消されていきます

詩人屋さんは本物の猫みたいに

むーん!と上を向いて

ゴロゴロ喉を鳴らしました

そして匂いのしない石けんを選んで

よぉ〜く手を洗いました


キッチンではパン種が程よく膨らんでいます

スケッパーでとりわけて

ひとつひとつそっと丸めて

茹でた栗をのせたり包んだり

いつもの丸いパンが

ちょっとすまし顔になりました


雲予報士のあの子と

三つ目の友達と

もちろん毛糸屋さんにも

あとで届けてあげましょう


“焼きたてもいいけど翌日のほうが美味しいのよね”


食いしん坊の詩人屋さん

かぎしっぽをちょっとふって

オーブンの様子を見に行きました


トーザ・カロットの岬にも

時折ひんやりした風が吹くようになってきたのでした