猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

墨流しのきみ

きみを見つけたとき

ぼくの内側は

墨流しで染めあげられた


自分の名と

ぼくの名と

愛犬の名と

旧姓と

さらに

3つのアナグラム


それぞれ器用に使い分けては

ひっつきむしのようについてくる


きみを見つけたとき

ぼくの内側は

墨流しで染めあげられた


自分の名と

ぼくの名と

愛犬の名と

旧姓と

さらに

3つのアナグラム


それぞれ

みんな別人だよと言いたげに

それとも気づいて欲しくてたまらなそうに

わざと遠くに

わざと近くに

ひっつきむしのように現れる


きみを見つけるたび

ぼくの内側は

墨流しで染めあげられて


浴びせられる嫉妬も

なすりつけられる悪意も

受け流してはいるけれど


きみは今夜も

ひっつきむしのように現れて

ぼくを

墨流しに染めていく