妻が
旅猫の種族の中でも
とびきりの歌い猫だったことは
聞いているだろう
窪みにいる頃は猫が歌うなんて
信じちゃいなかったがね
妻から教えてもらった歌は
今思うと
生きる星を選べない者にとっては
不吉な言霊が並ぶものばかりで
妻は
どこでも楽しげに歌っていたが
ふたりで街を歩くと白い目で見られたものだ
何しろ
最後には猫しかいなくなるという
歌ばかりだからねえ
孫はぼくと違う種族だから
できればあまり教えたくない歌なんだよ
“空降り”や“雲落ち”予報の参考になるからと
聴きたがるんだが
どうしたものかねえ
ミケが“にゃぁ”しか言わなくてよかった
おや
しっぽを揺らしているね
こんな話でも退屈しないのかい