2018-07-16 風 ふたり 自分の中に風があると知ったのは 息を吹き込むことで 美しく鳴るという楽器を 習い始めてからのこと 息を整えても 用心深く舌でつかまえても 心乱れる日は 自分の中の風を使いこなせない 吹き込んだつもりでも楽器からこぼれ続ける風 先生は苦笑混じりに “あなたは恋をするとすぐに音色にあらわれるわねえ” そう言った そんな日が3ヶ月ほど続いて 自分の中の風がようやく楽器からこぼれなくなったとき 先生はにっこりして “幸せすぎないことも人生には必要よ” そう言った