猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

自分の中に風があると知ったのは

息を吹き込むことで

美しく鳴るという楽器を

習い始めてからのこと


息を整えても

用心深く舌でつかまえても

心乱れる日は

自分の中の風を使いこなせない


吹き込んだつもりでも楽器からこぼれ続ける風

先生は苦笑混じりに

“あなたは恋をするとすぐに音色にあらわれるわねえ”

そう言った


そんな日が3ヶ月ほど続いて

自分の中の風がようやく楽器からこぼれなくなったとき

先生はにっこりして

“幸せすぎないことも人生には必要よ”

そう言った