猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

旅猫

室内ばきをひとりじめして

きみと同じ模様の

小さな生き物が眠る

 

壊れかけた星を渡る猫の種族は

最初は小さな青い星にあらわれ

その後

星間の噂にのぼるぐらいには

目撃情報があるらしい

 

だからこの星では

旅猫ではなく

“放浪猫の奴ら”と忌み嫌われ

“猫が空を落とす”という不吉な慣用句まで存在する

 

不吉といえば

旅猫たちに伝わるこんな歌があるそうだ

 

牛がいなくなり

犬がいなくなり

鳥がいなくなり

人がいなくなり

猫だけになる

 

そんなことあるわけないのにね

きみは笑いころげてた

 

牛も

犬も

鳥も

いなくなったとき

きみのせいじゃないのに

ここも猫だけになっちゃうと泣きじゃくった

 

室内ばきをひとりじめして

きみと同じ模様の

小さな生き物が眠る

 

“旅猫をやめてあなたの隣にいたかった”

 

空が落ちた日付

三丁目の消印が押された手紙

 

旅猫から届いたやさしく悲しい手紙