猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

旅猫の噂

昔々小さな青い星に

人のように話し人のように二本足で歩く

猫そっくりの生き物が暮らしていました


猫そっくりの生き物は

森のうんとうんと深いところや

洞窟のうんとうんと奥のところや

海にうんとうんと近い崖みたいなところ

ようするに

“果て”とか“隅っこ”と称される

人にとってはよくわからない

そんな場所を好んで

静かに静かに暮らしていました


ある日

小さな青い星に諍いごとが起こりました

小さな星の上でのことなので

諍いごとはあっという間に星中に広がり

そのせいで

空が剥がれ落ちたり

牛や鳥がいなくなったりしたのです


“旅猫のせいだ”

瞬く間にそんな噂が広まりました


猫そっくりの生き物たちは

ただただ穏やかに静かに暮らしていただけなのです


それでも

小さな青い星が壊れかけていたのを知っていたので

森のうんとうんと深いところや

洞窟のうんとうんと奥のところや

海にうんとうんと近い崖みたいなところ

ようするに

“果て”とか“隅っこ”と称される

人にとってはよくわからない

そんな場所まで諍いが押し寄せる前に

猫そっくりの生き物たちは

旅に出ることにしたのでした