猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

トーザ・カロット岬の毛糸屋さん-21

生ぬるい風がカーディガンを揺らしています

Mサイズのホットココアを抱え直しながら

“今度は誰にあげようかな”

女の子はひとりごとを言いました


岬の毛糸屋さんでは

毛糸玉にkanadeを定着させてお店に並べるのですが

その時にほんの少し毛糸屑が出るらしく

集めていたらいつの間にかまんまるになったのだとか


昨日

猫そっくりの店主が


“店番のお礼です”


そうウインクして

「青色の夕焼け」のいう名の

小ぶりの毛糸玉をいくつか手渡してくれました


“売り物にはならないけれど練習用に”


楽しげにしっぽをゆらゆらさせると

コースターの編み方のプリントをとりだして


“わからないところがあったらあたたかい雨の日にくるように”


そう言いました


女の子はココアを飲み終えて

友達の顔をひとりひとり思い浮かべました


トーザ・カロット岬にも

あたたかな雨の季節が近づいていたのでした