生ぬるい風がカーディガンを揺らしています
Mサイズのホットココアを抱え直しながら
“今度は誰にあげようかな”
女の子はひとりごとを言いました
岬の毛糸屋さんでは
毛糸玉にkanadeを定着させてお店に並べるのですが
その時にほんの少し毛糸屑が出るらしく
集めていたらいつの間にかまんまるになったのだとか
昨日
猫そっくりの店主が
“店番のお礼です”
そうウインクして
「青色の夕焼け」のいう名の
小ぶりの毛糸玉をいくつか手渡してくれました
“売り物にはならないけれど練習用に”
楽しげにしっぽをゆらゆらさせると
コースターの編み方のプリントをとりだして
“わからないところがあったらあたたかい雨の日にくるように”
そう言いました
女の子はココアを飲み終えて
友達の顔をひとりひとり思い浮かべました
トーザ・カロット岬にも
あたたかな雨の季節が近づいていたのでした