あの日だって
それなりに暑かったはずなのに
ツクツクボウシが鳴いてたって
暑すぎると空を睨む
街がまるごと消えたって
たくさん人が消えたって
蝉も鳥も犬も猫もネズミも
消えたんだって
その日あたしは確かに聞いた
遠くの街の不思議なうわさ
あの日は
たくさん消えたと大人たちが
小声で話した
何もかも
丸ごと消えたと大人たちは
沈痛な面持ちになった
あの日だって
それなりに暑かったはずなのに
夜が長くなり始めても
暑すぎると空を睨む
見上げる空があることを
どこか不思議と感じながら