“風ではないものを磨きなさい”
天気をつかさどるかみさまは
おっしゃいました
長い雨の季節
わずかに不規則なリズムで
水滴が大地を叩いています
岬の風模様と雨模様とを彩る
風磨きのうさぎは
ひさかたぶりに宝箱から
いにしえの音の葉をとりだしました
いつだったか
霧を作るための小さなバケツを
ひっくり返してしまったのです
大変、大変とふわりふわり地上に降りて
よいしょとバケツを抱えたとき
そばに一枚の譜面を見つけたのでした
四角やひし形の音符がずらり
4線譜に並んています
とても古い讃美歌のようです
猫のものとも人のものとも
あるいは
この星のものなのかも
定かではありません
風を磨くご用のない日に
ゆっくり眺めましょうと
持ち主が現れないのをよくよく確かめて
小さなバケツと一緒に持ち帰ってきたのでした
“風ではないものを磨きなさい”
天気をつかさどるかみさまは
おっしゃいました
長い雨の季節
わずかに不規則なリズムで
水滴が大地を叩いています
風磨きのうさぎは
小さなリュートを抱え込んで
のんびりと音の葉を奏でているのでした
[ご参考まで→リュート演奏の映像]