猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

風磨きのうさぎ-6

“風ではないものを磨きなさい”

天気をつかさどるかみさまは

おっしゃいました

 

長い雨の季節

わずかに不規則なリズムで

水滴が大地を叩いています

 

岬の風模様と雨模様とを彩る

風磨きのうさぎは

ひさかたぶりに宝箱から

いにしえの音の葉をとりだしました

 

いつだったか

霧を作るための小さなバケツを

ひっくり返してしまったのです

大変、大変とふわりふわり地上に降りて

よいしょとバケツを抱えたとき

そばに一枚の譜面を見つけたのでした

 

四角やひし形の音符がずらり

4線譜に並んています

とても古い讃美歌のようです

猫のものとも人のものとも

あるいは

この星のものなのかも

定かではありません

 

風を磨くご用のない日に

ゆっくり眺めましょうと

持ち主が現れないのをよくよく確かめて

小さなバケツと一緒に持ち帰ってきたのでした

 

“風ではないものを磨きなさい”

天気をつかさどるかみさまは

おっしゃいました

 

長い雨の季節

わずかに不規則なリズムで

水滴が大地を叩いています

 

風磨きのうさぎは

小さなリュートを抱え込んで

のんびりと音の葉を奏でているのでした

 

 

[ご参考まで→リュート演奏の映像]

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