猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

その人は知らないままだ

数日前、拙作品に時折登場する「男友達」のモデルとなった人物が遊びにきた。

立ち話も何なので部屋に招き入れる。以前からのお願いごとをテキパキこなして、「またね」と慌ただしく帰っていった。

 

男友達。

甘美な響きだと、舌の上で転がしながら改めて思った。

その人は、わたしがSNSをやっていることも詩人であることも知らない。

とても長い付き合いになるというのに、打ち明けられずにいる。

 

ただ。

そういえば。

 

わたしも、その人がSNSをやっているかどうか尋ねたことがなく、かと言ってふたりの間でタブーになっているわけでもなかった。

日中、どこで働いているかも互いに知っているのだけど、「今、どうしてる?」のLINEすら送りあったこともなかった。

 

その人は知らないままだ。

わたしも、またその人を知らないままなのだ。