小さな青い星には
七夕という伝説があると
宇宙猫から聞いたことがあります
ただ
起こったのか起こらなかったのか
わたしたちにとってはそれだけのこと
物語としては興味深いが
「猫にとっての時間軸はあってないようなもの」
猫そっくりの毛糸屋の店主は
瞳をまあるくして
長いしっぽをゆらりゆらり
それだからこそ
もう戻らない今日のことが
いつまでも愛おしい、と
猫の両手にすっぽりおさまるほどの
小ぶりの毛糸玉をひとつ
僕の手にのせてくれた
「静かな雨の約束、という名の毛糸です」
しとしとと
森に降る雨の音が毛糸玉から
かすかに立ち上って
僕は妻を想った