猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

静かな雨の約束-5〜トーザ・カロットの人々

小さな青い星には

七夕という伝説があると

宇宙猫から聞いたことがあります

 

 

ただ

起こったのか起こらなかったのか

わたしたちにとってはそれだけのこと

物語としては興味深いが

 

「猫にとっての時間軸はあってないようなもの」

 

猫そっくりの毛糸屋の店主は

瞳をまあるくして

長いしっぽをゆらりゆらり

 

それだからこそ

もう戻らない今日のことが

いつまでも愛おしい、と

猫の両手にすっぽりおさまるほどの

小ぶりの毛糸玉をひとつ

僕の手にのせてくれた

 

「静かな雨の約束、という名の毛糸です」

 

しとしとと

森に降る雨の音が毛糸玉から

かすかに立ち上って

僕は妻を想った